川島モデルの新バットで満塁弾 ホークス中村晃が探る長打力アップの道
工藤監督もカギとする6番・中村「打点は意識してやります」
珍しく喜びを表に出して爆発させた。1日、ヤフオクドームで行われたオリックス戦。6回に逆転の満塁本塁打を放ったソフトバンクの中村晃外野手は、左手を掲げて一塁ベースを回ると、表情を崩して会心の笑みを浮かべた。ダイヤモンドを一周し、仲間とハイタッチを繰り返すと、再び笑顔が弾けた。普段はポーカーフェイスな“職人”タイプの中村晃には珍しい瞬間だった。
「満塁は打ったことがなかったので。初本塁打ですしね」と、試合後はいつもの調子で淡々と振り返った。2点を先行されて迎えた6回の攻撃。先頭の本多が右前安打で出塁し、内川も右前安打でつなぐ。デスパイネが四球を選んで1死満塁。絶好の場面で打席が回ってきた。
「犠牲フライでいい。三振しないように、そういう意識でいきました」。初球はボール、2球目は見逃し、3球目がボール、4球目はファールにして迎えた5球目。「甘いボールはなかなか来ない。それでも打たないといけない。ただ、その甘いボールを仕留められたのはよかったです」。オリックス先発の山岡が投じたストレート。インコースを目掛けて投げた球は真ん中付近に入った。
仕留めた打球は右翼スタンドへと一直線。大歓声に湧き上がるヤフオクドームの中心で、中村晃の表情が緩んだ。この打席の直前、ベンチを出るときに西田哲朗内野手から「ゆっくり振ってください。ゆっくりいけば大丈夫です」と助言があった。
「僕がたまたま聞いたんです。いい結果が出てなかったので。誰かの力を借りようかな、と。力むとどうしても早くなるので、ゆっくりいけば大丈夫と言われて、その通りやったらいい結果が出ました」
効果はてきめん。まさかの逆転グランドスラムとなったのだ。
今季は長打力アップを目論み、打撃スタイルに手を加えた。バットも、昨季途中に使った川島慶三のものをモデルにした。よりヘッドが効くようになり、打球に飛距離が出るように。ただ、バットの変化とともに、これまでキャッチャー寄りにあったミートポイントもピッチャー寄りに変わった。まだ適応を進めている最中。「バットはこのままいくと思います。あとは自分の動き。フォームがもう少し良くなってくれば」と語る。
工藤公康監督は中村晃の座る6番、そして松田宣浩の7番を打線のキーポイントに挙げる。「打点は稼げる打順だと思う。前の打者がいいだけに、打点は意識してやります。今日みたいに一気に返すことが出来ればチームの得点力も上がる。1つ1つ稼いでいければと思います」。中村晃が打てば、ホークス打線の脅威は増す。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)