追い出されたブルペン「背番号分かってんのか」 冷遇に直面する育成選手の“悲哀”
寮での生活も「毎月自由に使えるお金は3万円くらい」
3桁の背番号が反骨心の象徴。プロ野球各球団でも、1軍の舞台を目指してアピールを続ける育成選手たちがいる。チームによって置かれる環境に違いはあるものの、支配下への道のりは決してたやすくない。中には“冷遇”に直面してきた選手もいる。
ドラフト1位なら1億円にものぼる入団時の契約金。一方、育成契約の場合は300万円の支度金が支払われる。当然、年俸も格段に安い。球団の寮に入って生活費は浮くものの、とても華やかな世界とは思えない日々を送る。
「体のケアに使う治療費や携帯などの通信費、あとは将来のことを考えて少しでも貯金。そうすると、毎月自由に使えるお金は3万円くらいですかね」
かつての育成投手は、当時を振り返って言う。オフの度に外食に出かける支配下選手を見ながら、寮で3食を済ませる。「美味しいから外食に行く必要もないんですけどね」。時間を持て余すと、室内練習場に行ってストレッチをしていた。
たまに外出する時も、ためらいなくタクシーで繁華街に向かうドラ1を横目に電車移動。期待値に対する対価の違いをまざまざと感じる日々が、そのままモチベーションに。「負けたくねーなとは常に思っていました」。
支配下との違いは、ユニホームを着ていても如実に感じた。2軍戦で、先にチャンスをもらうのはドラフト上位指名の選手から。それは理解できる。ただ、ブルペンで投球練習していた際、首脳陣から発せられた言葉には驚いた。「なに投げてんだ。自分の背番号分かってんのか」。育成が真っ先に投げられる立場ではない。酷なひと言だと思った。
もちろん二人三脚でサポートしてくれる指導者もいるし、自分が支配下に上がれば環境も一変する。今のプロ野球でも、育成から球界トップに上り詰めた選手は少なくない。ただ、ひとつ言えるとすれば「とりあえず育成からやってみよう」という楽観的な気持ちでは淘汰される世界。3桁の背番号には、悲壮な思いも含んでいる。
(Full-Count編集部)