プロ野球の新人合同自主トレがスタート かつてマー君もビリだった主な大物選手の“第一歩”とは
プロのペースを掴む第一歩
キャンプを前に各球団では新人選手たちによる合同自主トレが行われている。これはまだプロ野球選手として右も左もわからない1年生に、プロの練習や寮での過ごし方、先輩との接し方などの基本を教え込む時間でもある。同時に、球団、首脳陣は各選手の能力を把握する。1か月後に迫ったキャンプで1軍に帯同させても問題ないか、あるいは2軍スタートのほうがいいのかを見極めるのである。
練習メニューの中で毎年、注目されるのが持久走だ。要はスタミナのチェックである。球団によって距離は3000メートルや3500メートルなどまちまちだが、注目の新人は速かろうが、遅かろうが、メディアに取り上げられてしまう。高校生と大学生、社会人では基礎体力に違いがあるにも関わらず、同じ物差しで計られてしまうのだ。
今から7年前のことである。楽天に入団した田中将大投手も注目のルーキーとして脚光を浴びていた。本拠地のレフトとライトのポール間走12本の持久走が行われたが、投球が素晴らしかった18歳のマー君も8人中、最下位。なんと6人に周回遅れをとってしまった。本人は「こんなにしんどいとは……。僕、走るの苦手なんです」と天を仰いだ。あまりにもスタミナがなかったため、当時の首脳陣は先が不安になり、どのように指導していくが悩んだという。
だが、蓋を開けてみれば、田中は新人王を獲得する大活躍を見せている。このことからも分かるように、その時点での順位は関係ない。田中の場合もそこから持久力をどうすれば高められるかを考え、投球に必要なスタミナをつけていった。最初の段階から持久走が速いにこしたことはないが、鈍足が注目されてしまっても、そこからどう乗り越えるのかが大切なのだ。マー君も最初は走力に難はあったが、強い信念があった。
かつての大物たちの中にも、ゴールデンルーキーだった時代に苦戦を強いられた選手がいた。
星稜高校から巨人に入団した松井秀喜氏はキャンプ初日に過熱するフィーバーぶりに体調を崩し、下痢になったという。日本ハムに入団した中田翔外野手も、最初は合同自主トレのポール間走りで、気持ちが悪くなり、リタイア寸前になった。
球界を代表する選手になった田中も松井氏も中田も、最初はスタミナ面や体調面に疑問符がつくスタートだった。それでも苦い経験を乗り越え、精神的に強くなり、プロの階段を上がっていった。今年のルーキーたちの中にも、プロのペースについていけない選手が出てくるだろう。だが、何も悲観することはない。この苦しみが次のステップアップへとつながるのだ。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count