オリ中嶋監督の決断に参謀すら「うわー」 26年ぶり日本一を呼んだ“究極の先読み”
オリ水本ヘッドが振り返る日本シリーズ…驚かされた中嶋監督の投手起用
中嶋聡監督が歓喜の表情で宙を舞った今年の日本シリーズ。オリックスがヤクルトとの激闘を制し、26年ぶりの日本一に輝いたが、それはまた“ナカジマジック”采配の勝利とも言われている。実際、どうだったのか。何か秘密はあるのか。その舞台裏は……。指揮官を支えた水本勝己ヘッドコーチはシリーズのターニングポイントを0勝2敗1分で迎えた第4戦と指摘。さらに、あの大胆な選手起用についても“参謀視点”で振り返った。
水本ヘッドコーチは「監督は常に一手先、二手先を考えている。ここがダメだったらどうしようとか、いろんなケースを想定している。ホントとにかくすごいです」と指揮官の采配にうなり声を上げる。“ナカジマジック”と言われることも、それこそ当然とばかりに「こういうふうにする、こういうふうにしていこう、こういうふうにするぞ、とか何種類も持っていますよ。勉強になります」と声を大にした。
黒星、引き分け、黒星から白星を4連続で重ねての日本一。水本ヘッドがターニングポイントとした第4戦は1-0で勝利した試合だ。なかでも5回1死三塁で先発・山岡泰輔をリリーフした宇田川優希が山崎、山田を連続三振に仕留めたシーンは圧巻だった。犠牲フライも許さず三振が取れる可能性がある宇田川を選択して、見事にはまったわけだが、そこまで無失点の山岡を代える決断は簡単にできることではない。
「うわー、思い切ったことをするなあって思いましたよ」と水本ヘッドは言う。そして「このゲーム展開、たぶん1-0だよという感覚で、もう点をやれない状況じゃないかという先読みの部分はすごく感じた。それはコーチや選手にも伝わったと思います」と付け加えた。指揮官の腹をくくったタクトがチームのムードも引き締め、さらに結果が出たことで、そのパワーは倍増。そのまま勝利をつかんだ。この白星がシリーズの流れを取り戻すきっかけになったと見ている。
第5戦にその宇田川と山崎颯一郎の剛腕リリーフ2人をベンチから外した中嶋采配にも水本ヘッドは「びっくりしました。あれは絶対、真似できません。すごいっす。すごいと思います」と、またうなった。第4戦で宇田川は1回2/3、山崎颯は2回を投げていたが「あそこで壊れたらアカンとか、そういう経験がないからとか、なかなか考えられるものでないでしょう。あんなことをする監督は今まで誰ひとりいなかったと思いますよ」とまで口にした。
「(第4戦で)1勝したことで(第6、7戦が行われる)神宮に休みを挟んで行けるってことも計算されていたとは思います。でも、のちのち考えれば、そうですけど、その時はやっぱりびっくりしますよ」。いつもそばにいる参謀でさえ、こう言うのだからまさに“ナカジマジック”か。そんな水本ヘッドはシーズン中から中嶋監督にお願いしていることがあるという。それは「僕が変なことを言ったら怒ってください」だった。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)