20人流出の“悲劇”を断つ5年15億円 西武の覚悟…渡辺GMが明かす源田大型契約のワケ
5年総額15億円+出来高契約に「もし来年FAすれば普通」
来季中に国内FA権を取得する見込みの西武・源田壮亮内野手が26日、1億1000万円増の来季年俸3億円、総額15億円プラス出来高の5年契約を結んだ(金額は推定)。西武ではFAによる主力の流出が絶えず、今季国内FA権を取得した正捕手の森友哉もオリックスに移籍する中で、球界随一の遊撃守備を誇るキャプテンが“生涯ライオンズ宣言”。編成トップの渡辺久信GMは感激の面持ちだ。
「FAは来年なんだけど、どうしても残ってほしい選手なので、1年早く複数年契約を提示しました。(5年契約は)それだけの選手だと思いますし、もし来年FAで手を挙げれば、それくらいは普通かなと思います」と渡辺GM。「ディフェンスのポイントとなる選手で、そこが抜けるとチームとして難しくなる。FAは選手が取った権利で、どう使うかは選手次第だけれど、ゲンちゃん(源田)は自分の考えだけでなく、ファンの思いも汲んでくれたと思う」と胸をなでおろした。
渡辺GMは2013年まで6年間監督を務めた後、翌14年からシニアディレクターに就任しチーム編成に携わっている。2019年から現在の肩書となった。「ゲンちゃんはアマチュア(トヨタ自動車)時代は9番打者でね……打撃は二の次で、プロに入ればよくなるだろうくらいの感覚。守備オンリーで獲った選手だった」と振り返り、「まさか打撃の方でも打率2割7分くらいを安定して残し続けるとは、正直思っていなかった。プロの水が合い、指導者も良くて、レフト前ヒットしか見たことがなかった選手が引っ張れるようになった。ずっと見てきて、ここまでの選手になったか、という感慨がある」と述懐した。源田は5年契約最終年には34歳となるが、渡辺GMは「全然大丈夫。そこから先も、まだまだ伸びしろがあると思う」と太鼓判を押す。
西武はFAによる他球団(米国を含む)への流出が、今年の森を含めて12球団最多の通算20人に上る。渡辺GMのフロント入り後も、岸孝之投手(現楽天)、浅村栄斗内野手(現楽天)、炭谷銀仁朗捕手(現楽天)、秋山翔吾外野手(現広島)らが去っていった。決して資金力豊富とは言えず、つらい立場である。「西武に入って生え抜きで育った選手ばかりですから、私の立場から言えば、当然最後まで一緒にやりたい。常に優勝を争うチームをつくっていく上でも、主力が抜けることはダメージになる。ただ、そこにチャンスが生まれて若手が育つというところを歩んでいるチームなので、ネガティブなことばかりを考えず、前を向いていきたい」と話す。
一方、引き留めに成功するケースが少しずつ増えていることも事実だ。このオフには、今季中に国内FA権を取得した外崎修汰内野手が4年契約で残留を決めた。2020年オフには守護神の増田達至投手が4年契約、栗山巧外野手が3年契約、昨年オフには中村剛也内野手が2年契約を結んでいる。渡辺GMは「非常にありがたい。お金の面を含めて、いろいろな条件があるが、簡単に言えば誠意が伝わっているのかな」とうなずくが、今後へ向けて楽観はしていない。次は、来季中に国内FA権を取得する見込みの主砲・山川穂高内野手の引き留めが大きな課題となる。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)