イチロー氏を引き寄せた日本人の“ポケットマネー” 争奪戦だったマ軍移籍の舞台裏
日本人野手への評価に疑問視も担当スカウト「きっと首位打者になる、ヒットを200本打つ」
日米通算4367安打を誇るイチロー氏(現マリナーズ会長付き特別補佐兼インストラクター)のメジャー移籍時の秘話が話題になっている。吉田正尚外野手を5年9000万ドル(約118億円)で獲得したレッドソックスの地元紙ボストン・グローブが、当時のマリナーズGMで殿堂入りしたパット・ギリック氏と元オリックス投手コーチでマ軍環太平洋スカウトだったジム・コルボーン氏の証言をもとに伝えている。
2000年オフ、マリナーズはスター選手だったアレックス・ロドリゲスが10年2億5200万ドル(約331億円)の大型契約でレンジャーズに流出。同年オフに獲得したのがオリックスからポスティングシステムでメジャー挑戦を目指していたイチローだった。3年総額1400万ドル(約18億4000万円)で、ポスティング費用は1310万ドル(約17億2000万円)。ギリック氏は「当時の市場ではお買い得だったと思う」と振り返った。
イチロー氏が初の日本人野手。しかもステロイド時代でパワー全盛だった。NPBでの実績は十分だが、安打製造機がメジャーでも活躍できるのか。疑問視する声は多かったが、コルボーン氏は活躍を確信していたという。
「私は賭けたんだ。きっと首位打者になる、ヒットを200本打つ。80得点、50盗塁、15補殺は決めるだろうと言った。それも(移籍から)最初の5年間のうちにやってのけるだろう、と。そのほとんどを1年目に達成したから、いい意味で驚いたよ」
コルボーン氏はポスティング費用として1000万ドル(約13億1000万円)を提案。ただ、当時のマリナーズ筆頭オーナーでイチロー氏を確実に獲得したかった山内溥氏からポケットマネーも出たという。入札に参加したのは4球団。マリナーズの1310万ドルは断トツだったという。コルボーン氏は明かす。
「ドジャースも関心を示したが、ポスティング費用は900万ドルあたりだった。私の勘(1000万ドルを提案)があっていたことはとても誇らしかったが、1310万ドルは、どう転んでも失敗しない額だった」
その後マリナーズでの活躍はいうまでもないが、仮にドジャースへ移籍していれば野茂英雄氏らと共闘していたかも……。いろんな想像が膨らむ移籍舞台裏となっている。
(Full-Count編集部)