東海大菅生の“巨漢エース”が敵の応援歌を歌うワケ 指揮官語る素顔「顔面蒼白で…」

東海大菅生・日當直喜【写真:小林靖】
東海大菅生・日當直喜【写真:小林靖】

最速150キロのエース右腕・日當、フォークが冴え完封勝利

 守備の乱れを、エースが何度も断ち切った。阪神甲子園球場で行われている「第95回記念選抜高校野球大会」は28日、大会9日目の4試合を行った。第2試合では東海大菅生(東京)が1-0で沖縄尚学(沖縄)を下し、2021年春以来2年ぶりの甲子園8強入りを決めた。

 身長190センチ、体重105キロの大型右腕・日當直喜投手(3年)が踏ん張った。1点リードの5回、連続四死球と8番・糸数幸輝外野手(3年)の内野安打で無死満塁のピンチを招いたが、沖縄尚学の応援団が奏でる応援歌を口ずさみながら無失点で切り抜けた。その後も「リズムに乗るっていうか。良いリズムで終われたら次の攻撃につながると思うんで」と、相手の応援歌を耳に入れながら強力打線を6安打無失点に抑えた。

 この日、東海大菅生は3失策と守備が乱れた。日當は「仲間がエラーしたら、それをカバーするのがエース。それができなかったら本物のエースじゃない」と、最速150キロを誇るストレートと、キレのあるフォークで悪い流れを断ち切った。

 今年1月、コーチから指揮官へ就任した上田崇監督は、「いつも通りに投げられれば打たれない投手」と日當に厚い信頼を置く。しかし、エースとして責任感が強いが故なのだろうか。マウンドを下りると意外な一面をみせるという。「ベンチとマウンド、ユニホームとジャージで、全然違うんですよ。ベンチでは顔面蒼白で」。チームで一番大きな日當だが、人知れずおえつを漏らすこともあるという。

 日當もメンタルについて「弱いですかね……」とうつむいた。だが、「縦縞を着て、試合になったら、自分の可能性信じてやるしかないと思う」と言葉に力を込める。試合中にはこぶしを何度も高く突き上げた。「不安なんか吹っ飛ばして、自分が自信のあるボールを投げて打たれたらしょうがないので。それがエースなので」。持ち前の粘り強いピッチングで勝利をつかんだエースは「いつも通り平常心で、頭は冷静に心は熱く、で行きたいと思います」と4強入りへ自身を奮い立たせた。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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