「貢献度は計り知れない」 世界一に不可欠なMLB組、ベンチ裏で見せた気遣いの数々
宇田川への気遣い、佐々木朗希には逆質問も…同じ目線でチームをまとめたダルビッシュ
「第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」で、野球日本代表「侍ジャパン」は3大会ぶり3度目の優勝を成し遂げた。大会通じて取材をしたFull-Count編集部では、監督、選手の思いや言葉を紐解き、次世代につなげていきたいエピソードを紹介する連載「侍たちのlegacy(レガシー)」として、紹介していく。第2回のテーマは「献身」。メジャーリーガーたちが”若き侍”に遺したものを伝える。
日本列島が歓喜したWBCの優勝。選手たちもそれぞれのチームに戻り、一息ついた。そして、視線を自身の開幕に向けた。パドレスのキャンプ地へ戻ったダルビッシュ有投手もその一人。例年やってくる開幕へ向けて準備を進めているが、まだ少し、侍ジャパンのことが“気になる”ようだ。
宇田川への“愛情”が伝わってきたシーンだった。自身のインスタグラムのストーリーで宇田川優希投手(オリックス)のキーホルダーをなくしたことを報告したのだ。その後、「ちゃんと予備あります笑」と背番号「96」のキーホルダーの写真とともに投稿した。
一方、それに対する“アンサー”もあった。ダルビッシュが投稿した翌日、宇田川が今度はパドレスのパーカーを着用し「今日はこれで行ってきます!」と投稿。思えば、ナインが初めて決戦の地、ローンデポ・パーク(米フロリダ州マイアミ)を訪れたときも、宇田川はマウンドで投球フォームのモノマネを披露し、ダルビッシュを逆にイジっていた。宮崎合宿では考えられない光景だった。
今大会を語る上で欠かせないのがメジャーリーガーの振る舞いだった。ダルビッシュはメジャーリーガーとしてただ一人、宮崎合宿から参加。2月16日、合宿前日の練習から戸郷翔征投手(巨人)に変化球の握りを教えるなど、献身的な姿を見せた。佐々木朗希投手(ロッテ)に投球前のルーティンを聞くなど、あくまで指導ではなく、対等な“意見交換”の立場をとった。山本由伸投手(オリックス)は第1クールの時の取材で「すごく話を聞こうとしてくださる姿勢もすごく尊敬できますし、人としても選手としてもどちらも素敵でした。すごく吸収する姿勢がある」と話すなど、合宿序盤ですでに選手たちの心をつかんでいた。
技術的な面だけでなく、ダルビッシュが見せた気遣いは「宇田川さんを囲む会」でファンの間には知れ渡っているだろう。2月20日のオフに行った投手会後の写真撮影で宇田川を中心に立たせた。宇田川に自信が戻ったのも、ダルビッシュの存在が大きかった。厚澤和幸投手コーチも東京プールでの取材で「宮崎からここまで、投手陣を作ってくれたというか、何から何まで先生としてね……。投手陣に対する貢献度が、計り知れない。気配りを相当しているからね。みんなには見えない、裏でも気をつかってくれている。本当に助かっています」と“先生”呼びで感謝を示していた。