汗にまみれた“最終回のサウナ” 1000本ノックより「断然うまくなれた」充実の時間
浅井樹氏は1996年に驚異の代打成功率.453「あの時が一番楽しかった」
1996年シーズン、三村敏之監督率いる広島は、長嶋茂雄監督の巨人に最大11.5ゲーム差をつけながら逆転優勝を許した。伝説のメークドラマ。カープにとってはまさかの、悪夢の出来事だった。元広島外野手の浅井樹氏はその時の1軍メンバー。9月に無念の故障離脱となったが、それまでスタメンでも、代打でも、守備固めでもチームに貢献した。「優勝はできなかったけど、勝つためにやっている感じが楽しかったですね」と笑顔で話した。
103試合に出場し、124打数42安打の打率.339、6本塁打、28打点、代打成功率.453。これが1996年の浅井氏の成績だ。レフト、ライト、ファーストを守ったが、当時の広島の外野は金本知憲氏、前田智徳氏、緒方孝市氏で鉄壁だったし、ファーストにも打点王に輝いたルイス・ロペス氏がいた。レギュラーの壁は分厚かったが、それよりも、そんなメンバーと一緒に戦えたことが、喜びだったという。
「前半が終わった時はもう優勝だと思って、ビールかけの時は僕ら若手が盛り上げなければいけないな、なんて考えていましたけどね。代打でもいいところで打つのが気持ち良かったし、守備固めでも1イニングを守って、逃げ切るっていう、あの充実感がもうたまらなかったですね。サウナに入ったんじゃないかってくらい、汗をびっしょりかいてね」
ショートの野村謙二郎氏には「浅井、今日も9回のサウナに入ってきたな」とよく声をかけられたそうだ。「自分の中ではノックを1000本受けるよりも、あの1イニングを守った方が、断然、守備がうまくなれたんじゃないかと思うくらいでしたね。とにかく集中していました。やっぱり、あの時が一番、楽しかったですね」。