図書館で知ったドラフト指名 戦力外後は大学院へ…“投げる化学者”が送る異色の人生
2005年ドラフトで西武へ…山本歩さんは関学大で準硬式野球部に所属
プロ野球選手を経て“化学の世界”で活躍する男がいる。2005年大学・社会人ドラフト5巡目で西武に入団した山本歩さん。関学大の準硬式野球部出身で、理工学部に所属した異色の経歴の持ち主だ。現役生活はわずか4年間だったが「プロの世界は凄いところ。それを知れただけでも良かった」と振り返る。
山本さんは大学時代に最速144キロの変則サイド右腕として活躍。4年時には全国大会で優勝を果たすなど“準硬界”では有名だったが「なぜ指名されたかも分からないぐらい。僕自身もビックリした。何も知らなかった。図書館で勉強していたら、友人が『これお前ちゃうの?』と教えてくれたぐらい無関心だった」とドラフト指名された時を語る。
ルーキーイヤーは体作りに専念した。大学時代は土日だけの練習だったため、他の選手に比べると圧倒的に体力不足。春季キャンプも別メニューで体力強化に取り組んだが、その段階でプロの凄さを思い知った。キャッチボール相手が投げる球筋に衝撃を受けたという。
「新人で別メニュー調整だったので、トレーニングコーチがキャッチボール相手だと思っていた。でも、実際は石井丈裕2軍投手コーチで(笑)。本当に失礼なのですが、ジャージを着ていたので気が付かなかった。短い距離でゆっくり投げているのに、音がバチバチと聞こえる。球の伸び、キレは今まで見たことなかった。とんでもない世界に来てしまったと……」
MVPや沢村賞も受賞した右腕からの“洗礼”だった。それでも地道な努力を続け、1年目は2軍で16試合に登板。2年目の2007年に1軍デビューを飾り、5登板で0勝0敗ながら6回1/3を2失点、11奪三振、防御率2.84をマークした。硬式球にも慣れ「得意だったスライダーに、打者は大学時代と同じ反応をした。これなら通用すると思った」と手応えを感じたという。