阪神20歳に漂う“小さな大打者”の資質 名球会員が称賛する驚異のスイングスピード
阪神の高卒2年目・前川右京はここまで18試合に出場し打率.306、6打点の好成績
■阪神 3ー0 巨人(1日・東京ドーム)
怖いもの知らずの若虎が躍動している。首位を走る阪神のレギュラーとして高卒2年目・前川右京外野手が存在感を見せている。ここまで18試合に出場し打率.306、6打点の成績を残すホープを野球評論家の新井宏昌氏は「プロの世界で10年やっている風格、構えを持っている。結果を残すには理由はある」と、分析した。
どんな投手であれ自身のスイング、打撃フォームは変わらない。1日の巨人戦(東京ドーム)では「6番・右翼」でスタメン出場した。相手先発は実績豊富なエース・菅野。無安打に終わったが直球、変化球に対しても迷いないスイングを披露し、鋭い当たりを連発させた。
2回の第1打席では137キロのフォークを中飛、5回の第2打席では一塁手・中田の好守に阻まれ一ゴロ。7回1死一、二塁の好機で迎えた第3打席は三飛に倒れた。それでも新井氏は「一番はどんな状況でも、しっかりバットを振れること。体勢が崩されることなく、バットの振り出しが安定している」と評価した。
身長176センチ、体重86キロとプロの世界では小柄の部類に入るが、スイングスピードは「レギュラーと遜色ない」と合格点。さらに「下半身の動きが若松さんに似ている。昭和の時代を生きてきた左打者の風格」と、ヤクルトで通算2173安打、220本塁打を放ち“小さな大打者”との異名を持つ若松勉氏の名前を挙げた。
前川のスイングは「安定してトップの位置からインパクトまで向かっていく」
交流戦から1軍デビューを果たし、まだ実戦は少ない。それでも新井氏は「勢いだけでなく、確かな打撃技術を持っている」と指摘する。どっしりとした沈むような下半身が特徴的で、スイングの際には「最後まで体が回転しない。体の動きを抑えてバットのヘッドを走らせる。スイングそのものは大きくならず、安定してトップの位置からインパクトまで向かっていく」と、1軍投手から結果を残せる理由を口にする。
ここまで本塁打こそ出ていないが「角度がついてくれば期待できる」という。強いライナー性の打球から二塁打(2本)、三塁打(2本)を放ち、得点圏打率.389と勝負強さも兼ね備えている。この日の試合でも「菅野に対しても、弄ばれるような感じではない。崩されることなくボールを捕まえている」と振り返る。
「現時点では放物線を描く打者ではないが、まだ高卒2年目。体が大きいわけではないが、吉田正尚(レッドソックス)のようになる可能性もある。楽しみな打者が出てきたのではないでしょうか」
がむしゃらに1軍の舞台に食らいつく背番号「58」。貴重な経験を糧に猛虎が目指す“アレ”のピースになることはできるのだろうか。2000安打を達成し名球会入りを果たした新井氏も今後の動向に注目している。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)