ドラ1右腕の夢は「宇宙飛行士」だった　“野球をやりたい”引き出した名門の仕掛け

日本ハム・達孝太が名門ボーイズに入った理由とは…

　日本ハムにドラフト1位で入団し2年目を迎えた達孝太投手は中学時代、複数のプロ野球選手を輩出している名門チーム「泉州阪堺ボーイズ」でプレーした。野球を本格的に始めたのが小学校5年生と遅かった中で、なぜ硬式球を握ろうと決断できたのか。その理由と足取りを振り返ると、強い意志があったことに行き着く。

「プロ野球選手になりたかったので、簡単に試合に出られるところじゃなくて、競争でレベルが高くなっていくところがいいと思ったんです」

　達はボーイズリーグでのプレーを選んだ理由をこう説明する。1学年の人数は30人近くに及び、試合のメンバーに入るまでも競争が待つという環境で育った。ただ当時の達は外野手。「めっちゃ打てたんですよ」と言うように、強打が魅力の選手だった。実際に天理高校への進学も、一塁手として声がかかったほどだった。

　現在194センチの身長は小さなころから高かった。小学生で180センチ近くまで伸び「バットが短すぎて困ってましたね」と笑う。中学3年で191センチもあった。本格的に投手を始めたのは天理高に入ってからだが、中学時代も投げることがあった。そして最後の夏は全国8強まで進み、敗れたマウンドにも立っていたのだという。

競争の中でも楽しくプレーする仕掛け「野球やりたいってなるんです」

　名門ボーイズ、そして人数も多いとなれば厳しい指導が想像できるが「そうでもなかったですよ、朝から指導者とPK対決をして、選手が勝ったら1日サッカーとか、そんな日もありました。監督はとにかく自由にやらせてくれましたね」と振り返る。

　ただ、今考えてみれば、これも選手の気持ちに火をつける方法の一つだったのではないかという。「みんな野球をしにきているわけですから。そうなると野球をやりたいってなるんですよ」。

　小学生の時は宇宙飛行士だった将来の夢は、いつしかプロ野球選手に変わっていた。「高校に入って、ここで3年間やったら上も狙えるなと思って。そこからです。本気になったのは」。念願の投手となり、甲子園にも出場。ドラフト1位でプロの指名を受けた。今はより強い真っすぐを投げようと、2軍で修行中だ。

「中学までは楽しくやれると思うんですよ。逆に楽しくなければ、辞めてしまうと思うんです。これだけ野球人口が減っているのに、ふるいにかける必要はないじゃないですか。やりたい、やりたいと思わせてくれるチームが一番だと思いますね」。野球への深い興味を楽しみながら伸ばした自らの経験と、重ね合わせていた。

（羽鳥慶太 / Keita Hatori）