強い広島の野球をバーチャル空間で体感 3連覇名将とファンが語り合う“贅沢な時間”
緒方孝市元監督、山田幸美アナウンサーがファンと楽しい時間を共有
広島に今、“風”が吹いている。強いカープにファンの熱も高まっている。それがマツダスタジアムでは熱気となって渦巻き、一体となってチームを後押しする。応援のスタイルは人それぞれだが、カープファンの間で新たに野球を楽しむサービスがある。それを体験してみると実に「贅沢な時間」を堪能できる。
その名は「カープ県」。バーチャル空間でファン同士がアバターを操作して、広島の本拠地のゲームを楽しんでいる。バーチャルのマツダスタジアムに到着すると、試合中継をインターネット上で観戦ができる。試合を見ながらファン同士でチャットで交流することもできる。さらには出演ゲストと実際に話をすることも可能だ。
ゲストには緒方孝市元監督、安部友裕氏、木村昇吾氏、中田廉氏らOBが招かれ、テレビ中継とはひと味違う解説を披露している。もっともテレビやラジオと違うのは、ウェブは双方向であるため、直接、出演者にファンが質問することができるのだ。
夢のような世界が広がっている。ある「カープ県」の回の一幕。西川龍馬外野手が離脱しているチームの状況を踏まえ、「緒方さんが監督ならば、4番に誰を起用しますか?」。ファンがそう聞くと、3連覇を成し遂げた名将は様々な選手の名前を出しながらも、坂倉将吾捕手の名を挙げ、その理由を丁寧に説明していた。わかりやすい解説だった。
ひとつひとつの打席についても、打者心理、投手心理を細かく分析し、チャット欄には「緒方さんの解説で内容のよい打席だったことがわかります」「奥深い……」とコメントが寄せられ、それを進行の“広島愛”の深い山田幸美アナウンサーが紹介する。自分のコメントが読み上げられれば、ファンの満足度も自然と高くなる。出演者や制作サイドの目配り、気配りも行き届いている。
球場に行かなくてもファンと解説者と語り合える場所を提供
全カープファンが球場に行けるとも限らない。だが、カープを愛する思いは同じである。中には球場から参加する熱心なファンもいる。同じ回での出来事だが「今、一塁側に良い風が吹きました」とチャットで報告があると、そこから試合の流れが変わり、カープ打線が逆転するシーンもあった。同じ試合を『リアル』と『バーチャル』で一緒に楽しむことができる貴重な瞬間でもあった。
緒方氏もこの試みを新鮮に感じているようで「もっとファンの方の声を聞きたいですね」と出演回を楽しみにしている。ファンが知りたいことを監督経験者が答えるという信じがたい空間が存在する。広島の全ホームゲームで実施され(由宇での2軍戦なども中継)それにファン同士が温かく、時には厳しく、意見を交換する。そこには愛情しか感じない。時代が作り出した新しい野球の見方を、カープファンが醸成している。
バーチャル空間、アバター、チャット機能でファン同士が交流……なかなか聞きなれない言葉で敬遠してしまいそうなファンもいるかもしれない。ただ、そこは心配無用。出演者も参加者もまだその全ての機能についていっていないため、その“ソワソワ感”も一緒に楽しめる。「カープ県」で時間を過ごし広島が勝ったとき、その一体感は現地に負けない充足感が得られるだろう。その風を一緒に感じることができるのも魅力のひとつでもある。
(Full-Count編集部)