打席に立たず虎を“威圧” 自力V消滅でも…巨人・坂本勇人が示した「独特の存在感」
7回にスタンバイも中田翔の逆転2ランで打席に立たず
巨人は9日、本拠地・東京ドームで行われた阪神戦に延長11回の末2-5で敗れた。これで、今季残り44試合で自力優勝の可能性が消滅。それでも幸いだったのは、前日(8日)の同カードで途中交代していた坂本勇人内野手、大城卓三捕手が出場したことだ。
坂本はこの日、試合前の練習中グラウンド上に姿を見せず、一方でショートも守れる北村拓己内野手が新たに1軍へ合流したことから、“抹消”のムードも漂った。しかし最終的に、スタメンこそ外れたものの、ベンチ入りを果たし、普段とは違った形で存在感を発揮した。
まずは、1点ビハインドの7回2死二塁の場面。中田翔内野手が門脇誠内野手の代打として打席へ向かう背後に、坂本も姿を見せ、ネクストバッターズサークルでブンブンとバットを振り始めたのだ。もし中田が四球で歩かされれば、次は坂本で追い打ちをかける――。そういう姿勢が、マウンド上の阪神2番手・桐敷拓馬投手に重圧となったかもしれない。中田翔は2球目を左中間席に放り込み逆転。これを受けて坂本はベンチへ下がり、打席には中山礼都内野手がそのまま入った。
2度目の登場は、2-2で迎えた延長10回の攻撃だった。1死一塁で吉川尚輝内野手が打席に立つと、坂本がネクストでスタンバイ。次打者・中川皓太投手の代打として出る構えを見せた。しかも、吉川は初球に送りバントの構えを見せ、バットを引いてボール。マウンド上の加治屋蓮投手をはじめ、阪神の守備陣はさまざまなケースを考えさせられただろう。結局、吉川はカウント2-1からフォークを打って出て、二ゴロ併殺。坂本は再び、打席に立つことなくベンチへ退くことになった。
敗戦の中にも光明「梶谷も戻ってきたしね」
坂本ほどの選手になれば、ネクストに立っただけでその場の空気を変え、相手に与える重圧は計り知れない。それを改めて認識させられた。坂本が実際に打席に立ったのは、阪神に3点を勝ち越された後の11回裏、2死一塁の場面だった。大城の代打で出て、阪神の守護神・岩崎優投手の前に空振り三振。この試合の最後の打者となった。
坂本は前日、3回の攻撃で代打を送られ交代。6月に右太もも裏を痛めて出場選手登録を抹消され、1軍復帰まで1か月以上を要した経緯があるだけに衝撃が走っていた。実際に打席に立ったことで、10日以降スタメン復帰の可能性も開けたといえそうだ。一方、同じく前日、打者が空振りした後のバットが右側頭部を直撃し、腫れもあって途中交代していた大城は、「5番・捕手」で“通常営業”。11回に代打・坂本を送られるまで出場した。
「梶谷(隆幸外野手)も戻ってきたしね」。原辰徳監督が敗戦後の会見で努めて明るく言及したように、坂本と同い年の34歳のベテランも、4試合ぶりにスタメンに名を連ねた。自力優勝が消滅しても、巨人の底力を示すチャンスはまだまだ残されている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)