巨人戸郷の“阪神戦不敗神話”はなぜ崩れたのか? 苦手近本に浴びた痛恨の一発

阪神戦に先発した巨人・戸郷翔征【写真:矢口亨】
阪神戦に先発した巨人・戸郷翔征【写真:矢口亨】

6回までは三塁も踏ませず無失点投球だった

■阪神 5ー2 巨人(10日・東京ドーム)

 巨人は10日に本拠地・東京ドームで行われた阪神戦に2-5で敗れ、3タテを喫した。先発の戸郷翔征投手は、6回まで無失点に抑えるも、7回に一挙3点を奪われ今季3敗目(10勝)。巨人が首位の阪神に今季4勝12敗1分と圧倒されている中、試合前の時点では、戸郷が先発した試合だけは4戦4勝(戸郷自身に白星が付いたのは3試合、6月30日の対戦ではリリーフした高梨雄平投手が勝ち投手)だった。ついに“不敗神話”も崩れた。

 戸郷は6回まで、味方打線の援護は1点だけだったものの、阪神打線に三塁を踏ませず、快調にスコアボードに「0」を並べた。ところが7回、先頭のシェルドン・ノイジー外野手に中堅フェンス直撃の二塁打を許し、続く梅野隆太郎捕手の高いバウンドの投ゴロを捕球後、三塁への送球がそれて一、三塁(記録は野選)。そして、木浪聖也内野手の打席中、一塁への牽制球を中田翔内野手が適時失策(捕球ミス)し、思わぬ形で同点に追いつかれた。体を打者の方へ向けていた中田は、あわててグラブを出したが弾いてしまい、三塁走者の生還を許した。

 さらに2死を取った後、この日の129球目を近本光司外野手に右翼席へ勝ち越しの2ランとされ、無念の降板。被弾したのはカウント2-2からの148キロ速球で、ベルトより少し上の高さではあるものの、内角の厳しいコースに見えた。しかし、阿波野秀幸投手チーフコーチは「近本選手が本塁打を量産しているスポットだということは分析でわかっていたが、そこへいってしまった。(捕手の)要求もそこだった」と指摘。「昨日(9日)の中野(拓夢)選手の本塁打もそうだが、勝負どころの詰めの部分で、感じ取っていかなければならないかもしれないです」とバッテリーに反省を促した。

 9日の対戦でも、2-1とリードして迎えた8回2死走者なしの場面で、2番手の鈴木康平投手が近本と同じく小柄な左打者である中野に、内角のスライダーを右翼席へ放り込まれて同点とされ、結局延長11回の末に敗れていたのだ。

この日の4打数2安打を含め対戦打率.444

 一方、戸郷は1週間前の前回登板(3日のヤクルト戦)で、9回149球完投勝利を挙げたばかり。その疲労が心配された登板でもあったが、阿波野コーチは「こちらも球数を気にして見ていましたが、出力は出ていた。基準よりタフな投手であることは証明済み。あまり100球とかは意識していません」と言う。

 阿波野コーチは「対戦打率の良くない打者がいるので、そのへんは簡単に勝負せず、1、2球はボールを使ったり、そういう(慎重な)勝負にしてほしいと伝えていた。それはできていたと思います」とも。試合前の時点で今季阪神戦負けなしだった戸郷にとって、その打者の1人が近本。この日の4打数2安打を含めて、対戦打率は.444(18打数8安打)となった。

 巨人は阪神との今季対戦が残り8試合で、仮に全勝しても12勝12敗1分。勝ち越すことはできない。それでも対策を徹底して、伝統の一戦で意地を見せてほしいところだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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