無安打でも思わず「ありがとう」 佐々木麟太郎を封じたクラーク国際の“魔術師”

花巻東・佐々木麟太郎【写真:羽鳥慶太】
花巻東・佐々木麟太郎【写真:羽鳥慶太】

プレート踏む位置も、腕を振る位置も変幻自在「合わせられないように」

 第105回全国高校野球選手権は13日、阪神甲子園球場で大会第8日を行い、第3試合ではクラーク国際(北北海道)が大熱戦の末、花巻東(岩手)に1-2で敗れ2回戦で姿を消した。終盤7回に追いつく激戦。高校通算140発を誇るスラッガー、佐々木麟太郎内野手(3年)を4打数無安打に封じたエース新岡歩輝投手(3年)は、持ち前の“魔術師投法”が冴えわたった。

 試合後取材に応じた新岡は、すがすがしい表情を浮かべていた。「練習してきたことは出せたと思っています。気持ちの面で負けたくなくて、その通りの投球ができた」。世代最強スラッガーとして注目される佐々木麟を封じなければ、先には進めない。そのために温めていた作戦を、完璧に遂行した。

 投手板を踏む位置を、右に左に何度変えただろう。腕を振る位置も上げたり下げたり。チームメートに“魔術師”と呼ばれるだけの投球を披露した。それでいて終盤まで直球は140キロを超えた。花巻東の打者はキレのいいボールに手を焼き、差し込まれた。

 佐々木麟との対戦は、初回が空振り三振、4回無死二塁では遊ゴロ、6回無死一塁では二ゴロ、8回1死一塁では遊ゴロという結果。甲子園初アーチを許さなかったどころか4打数無安打に封じ、走者を置いた場面で決定的な仕事をさせなかった。

 新岡はあらゆる“ずらし”を施した投球の狙いを「相手に自分のボールに合わせられないように、打ちづらくしたかった」と話す。麻原草太捕手(3年)は佐々木麟対策について「なかったです」とキッパリ。目を赤くしながら「新岡のボールの方が上だと思っていましたから」と続ける。何も特別なことはせず、普段通りの変幻自在ぶりを発揮すれば抑えられると思っていたのだ。

 大苦戦した佐々木麟は「いろいろ角度を変えて投げてくる。インコースを使う投球をしていて、素晴らしい投手だった」と脱帽。「攻める投球に苦労した。いい経験をさせてくれてありがとうと言いたい」と感謝の言葉をつむいだ。双方の成長の糧となる、見どころたっぷりな4打席だった。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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