安定感増した山崎颯一郎 160キロ剛速球が減少…投球数が2倍に増えた“第3の球種”

オリックス・山崎颯一郎【写真:矢口亨】
オリックス・山崎颯一郎【写真:矢口亨】

昨季からの変化をデータで分析

 昨季9月からリリーフに転向し、ブルペンを支える活躍を見せたオリックス・山崎颯一郎投手。ポストシーズンでは4ホールドを挙げ、球団26年ぶりの日本一に貢献した。迎えた今季は開幕から勝ちパターンの一翼として防御率1点台をマークするなど、目覚ましい進化を遂げている。ここでは、堂々たる成績を残せるようになった要因を探っていきたい。(数字は全て8月13日終了時点)

 昨季との比較で明確な違いが表れているのが奪三振率だ。昨季まではリーグ平均レベルの数値だったが、今季は11.34と大幅に向上している。いうまでもなく、奪三振は打球の行方や味方の守備力に影響されることなく1つのアウトを確実に取れるということだ。僅差の場面でマウンドに上がる勝ちパターンの投手にとって、奪三振の数は安定した成績に直結する。いまだに無敗であることも、奪三振能力の向上によるところが大きいだろう。では、奪三振が増えた理由はいったい何なのか。

 三振を奪った球種の割合を見ると、最速160キロの剛速球が代名詞だけあって、昨季は約7割がストレートで奪ったものだった。ところが、今季はそのストレートの割合が5割を切り、フォークやスライダーといった変化球で三振を奪う割合が増加している。ストレートは、昨季よりも平均球速、空振りを奪う確率ともに向上しており、威力が落ちた訳ではない。このことから、変化球の質が向上したことによって、ストレート中心だった決め球の割合が変わったと推察される。

 それでは、まず第3の球種であるスライダーから見ていこう。昨季はストレートとフォークが投球の8割以上を占めており、スライダーの投球割合はわずか8.6%にしか過ぎなかった。これはストライク率が低く、カウントを不利にしてしまうケースが多かったからだろう。それが今季はスライダーの精度が向上し、最もストライク率の高い持ち球へと変貌している。これに伴って、スライダーの投球割合は昨季から約2倍の16.7%にまで増加した。

 スライダーはストライク率が大幅に向上したものの、実はストライクゾーンへの投球割合は40.2%で昨季とほぼ変わりがない。ストライク率が向上した理由は、ボールゾーンで打者のスイングを誘えるようになったからだ。スライダーのボールゾーンスイング率は昨季の16.1%から46.9%にまで向上。これはリーグ2位で、打者が難しいコースでも手を出してしまうボールのキレがあるということだろう。甘いコースでストライクを取っている訳ではないため、被打率も.107と申し分なく、長打も許していない。

春季キャンプで野茂英雄氏からフォークを教わる山崎颯一郎【写真:パ・リーグ インサイト】
春季キャンプで野茂英雄氏からフォークを教わる山崎颯一郎【写真:パ・リーグ インサイト】

野茂英雄氏に教わったフォークで空振りを量産

 次は、フォークに注目してみる。スライダーと同様にフォークも昨季から変化したデータがあった。それは奪空振り率が昨季の19.0%から27.3%へと大きくアップしたことだ。これはリーグ3位の数字で、球界でも最高峰の決め球となっている。今春のキャンプで野茂英雄氏の助言を取り入れてフォークの握りを改良。その取り組みが実を結んだようだ。

 190センチの長身から投げ下ろす剛速球に加えて、2種類の変化球を球界屈指のレベルに磨き上げた。昨季の奪三振割合はリーグ平均レベルの20.0%だったが、今季はリーグ5位の32.3%にまで向上。およそ対戦する打者の3人に1人は三振に倒れるということだ。打球が飛ぶリスクを減らすことで、抜群の安定感を誇る投手へと成長した。

 今春のWBCには侍ジャパンのメンバーとして準々決勝からベンチ入り。7月に開催されたオールスターゲームでは、ファン投票で選抜され初出場を果たすなど、名実ともにスターの階段を登っている。セットアッパー、時にはクローザーとして、首位を走るチームのブルペンを支える男前リリーバー。ペナントレースもいよいよ佳境を迎えるが、今後は豪快なストレートだけでなく進化した変化球にも注目してもらいたい。

(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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