給料3か月未払いも「耐えて投げ続けるしか…」 元巨人右腕が体験した壮絶メキシコ生活
巨人、西武でプレーした高木勇人は昨年メキシカンリーグに挑戦した
巨人、西武でプレーした高木勇人投手は今季、独立のルートインBCリーグ・神奈川フューチャードリームス(FD)で選手兼任コーチを務めた。2019年限りで西武を戦力外となった後は活躍の場をメキシコに求めたが、給料未払いなど壮絶な体験をしていた。
西武を戦力外となった後、高木は2020年にメキシカンリーグへの挑戦が決定していた。しかしコロナ禍によりシーズンが中止となり、同年途中から神奈川FDに加入。そして2022年、再びメキシカンリーグに挑んだ。
何もかもが恵まれていたNPB生活から一転、言葉は通じないし、通訳もいない。そんな中で、まさかの経験もした。
「給料未払いは、めっちゃ記憶に残っていますね。どうなるんだろうって思いながら3か月くらい、次の試合もあるので耐えて投げ続けるしかなくて。ただ自分のお金が無くなっていくだけの状態でよくやっていたなって、結構凄いことだなと思います」
あっけらかんと振り返るが、その壮絶さは想像を絶する。クレジットカードが使えないような場所も多く、現金はみるみる減っていった。体が資本なのに「そうなったら、ご飯はドロドロの豆だけとか。応援してくれているお店が豆はくださるので、お皿にドバドバーって」と食事も限られた。それでも「美味しかったですよ。どこでも生きていけるので大丈夫でした」とたくましい。
今年は神奈川FDで初コーチ業も兼任「自分の経験を伝えることはできる」
結局はチームが代わり、再び給料は得られるようになった。そのチームは選手の管理もしっかりしており、食事もホテルでとることができた。しかし……。「スクランブルエッグに虫が入っているとかはしょっちゅうで。でも食べるしかないし、何とも思わなかったです。物事をあまりマイナスに考えないので、面白いなと思っていました」と笑い飛ばした。
子どもがまだ小さく、家族の意向もあって今年からは神奈川FDに帰ってきた。初めてのコーチ業にも精を出す。2014年ドラフト3位で巨人入りし、新人だった2015年に9勝を挙げて球宴に出場した華やかな経歴はもちろん、誰も経験していないような海外生活もまた、若き選手にとっては“生きた教材”だ。
「高校も社会人も含めて、ずっと今まで楽しかった思い出しかないので、NPBはこうだよ、海外はこうだよ、という楽しい思い出を伝えることができる。もちろん悪い点も知っているので、そこも教えられる。引き出しが多いという実感は自分ではないですけど、例えば悩んでいる子がいたら自分の経験を伝えることはできるかもしれないですね」
何事も前向きに楽しめるのは高木の大きな武器だろう。34歳になっても投げ続ける右腕は今後、どんな道を歩むのだろうか。
(町田利衣 / Rie Machida)