敵軍監督も「どうして強い?」 世界一の要因…馬淵監督が貫いた“本塁打不要”選考
高校通算140本塁打を誇る佐々木麟太郎内野手(花巻東)らは選出せず
徹底した戦略で、馬淵史郎監督は高校日本代表「侍ジャパン」を悲願の世界一に導いた。10日に台湾(台北)で行われた「第31回 WBSC U-18 ベースボールワールドカップ」の台湾との決勝戦に2-1で勝利し、歓喜の瞬間を味わい、11日に帰国。指揮官は“作戦勝ち”だったことを明かした。
「うちの子らはみんな、野球を知ってるから。“ちびっ子軍団”やけど、全部を知っている。そりゃあ、打ち勝てたら気持ちが良いけどね。打てなくても勝てる野球をする。野球はホームベースの踏み合い。(世界を相手に)パワーでは勝てんのじゃけぇ」
今大会前には、選出する選手を首脳陣と相談し、考え抜いた。ベンチ入りメンバーが20選手ということもあり「投手もできる二刀流の野手を選ぶと(起用の)選択肢が増える」と腕を組んだ。さらには「小技ができる選手で、足も使いたい。良いところを出してほしい。結果が出なかったら監督の責任だから。自分が責任を取るんだったら、自分の思った通りにやらんと」と犠打や盗塁の上手な選手を集めた。
長距離砲は不在。今夏の甲子園を沸かせた高校通算140本塁打を誇る佐々木麟太郎内野手(花巻東)、“広陵のボンズ”こと真鍋慧内野手(広陵)らはメンバーに入らなかった。指揮官は「そういう野球に切り替えるなら、そういう野球が得意な監督がやればいい。僕はそういう野球が得意ではない」と意志を貫いた。
今大会、チームでの本塁打は山田脩也内野手(仙台育英)が放った1本のみ。知花慎之助外野手(沖縄尚学)が「馬淵さんから(チームで)本塁打は出ないと言われていた。短打でつないでいこうという気持ちで(ナインは)話しています」と説明するように「スモール・ベースボール」を徹底した。
大会期間中、ベネズエラ代表の首脳陣は馬淵監督に「日本の野球はどうして強いのか?」と、ベンチ裏へ質問にきた。知将は通訳を介して「すぐに諦めない。続ける、ということですよ」と伝えた。国際大会でも光った馬淵監督の采配には、日本野球の執念が宿っていた。