元MLB選手が“ドラ1”指名→即移籍の衝撃 台湾最大級のトレード…NPB選手の未来も影響

台鋼ホークスへ移籍した翁ウェイ均、王溢正、藍寅倫(左から)【写真:台鋼雄鷹球団提供】
台鋼ホークスへ移籍した翁ウェイ均、王溢正、藍寅倫(左から)【写真:台鋼雄鷹球団提供】

王柏融のCPBLでの「契約所有権」譲渡も…実質的な「1対3+1」のトレード

 前後期60試合、1軍5チームで行われる台湾プロ野球(CPBL)。現在は後期シーズンの真っ只中だが、8月10日、台湾の野球ファンにとって衝撃的なニュースが飛んできた。今回はその大型トレードについてお伝えしていく。(情報は9月11日現在)

 衝撃のニュースとは、昨年“第6の球団”としてCPBLに参入し、今季は2軍公式戦で戦う「台鋼ホークス」と、「楽天モンキーズ」の間で成立した、実質的に「1対3+1」といえるCPBL史上最大級のトレード成立である。

 10日朝、大手紙がスクープを掲載。ファンが騒然とする中、両チームは正式にリリースを発表した。台鋼からは、7月のドラフト会議で全体1位で指名したばかりの元メジャーリーガー、林子偉内野手が楽天へ。楽天からは、かつてDeNAでもプレーした通算75勝左腕・王溢正投手、2020年に9勝を挙げた若手右腕の翁ウェイ均(ウェイ=偉の偏が王)投手、ハッスルプレーが持ち味の藍寅倫外野手の3選手が、台鋼へ移籍することになった。

 さらには、NPBで今季育成契約から7月30日に支配下昇格、現在は1軍で活躍中の日本ハム・王柏融外野手の、CPBLにおける「契約所有権」を、楽天から台鋼へ譲渡することも発表された。王が将来的にCPBLに復帰した際の契約権が、両チームのトレード交渉に組み込まれたことは異例なケースといえるだろう。

 楽天の前身、ラミゴ・モンキーズ時代の2016年、2017年に2年連続打率4割をマークするなど、CPBLを代表する打者だった王は、2018年オフにポスティングで日本ハムと契約。CPBLには、ポスティング選手が復帰する場合、元の所属球団と契約しなければならないというルールがあるため、2019年オフにラミゴを引き継いだ楽天が王の「契約所有権」を保有している。将来的に王がCPBLに復帰した際、まず手続き上は楽天に「復帰」し、そこから台鋼にトレードされる流れになるという。

楽天モンキーズに移籍した林子偉【写真:中華職業棒球大連盟CPBL提供】
楽天モンキーズに移籍した林子偉【写真:中華職業棒球大連盟CPBL提供】

元メジャー・リーガーの林子偉は「日常茶飯事だったので驚きはない」

 CPBLは、トレードが活発ではない。しかし、ドラフトで「いの一番」の指名権を持つ台鋼が今季は2軍で戦い、来季から1軍に参入するのに対して、他の5球団はまさに現在、プレーオフ、台湾シリーズ進出を目指し戦っている。即戦力の林子偉にはドラフト前からトレードの噂はあったが、実際に、ドラフト1巡目・1位指名選手の即移籍が実現し、さらには将来、実質的な「交換相手」に王が含まれていたことに多くのファンは衝撃を受けた。

 8月14日、台鋼は林子偉を選手登録し、球団首脳や洪一中監督の立ち会いのもと記者会見を行い、楽天での健闘を祈った。実際にユニホームを身につけることはなかったが、リーグ公示によると、背番号はレッドソックスやワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でつけた「5」だった。

 翌15日、王溢正、翁ウェイ均、藍寅倫の3選手は、まず台鋼の遠征先、南部・嘉義市球場で洪一中監督ら首脳陣とナインに挨拶。同日夜には楽天桃園球場の試合で始球式を務め、セレモニーでは涙ながらに古巣への感謝の言葉を述べた。

 16日には、楽天が林子偉の入団記者会見を行い、2年4.5か月、総額台湾元3100万元(約1億4260万円)の契約を発表。指名から1カ月弱でトレード移籍となったことについて、アメリカで10年以上プレーしてきた林は、「トレードは(アメリカでは)日常茶飯事だったので驚きはない。今回はたまたま自分が当事者になっただけだ。トレードは各球団にとってプラスになるかもしれない」と笑顔を見せた。

 林は8月19日、ホームの統一ライオンズ戦で、「6番・遊撃」でCPBLデビュー。初回に、いきなり最初の守備機会でボテボテのゴロを弾き苦笑いを見せたが、打っては4打数2安打と活躍した。その後、新型コロナウイルスに感染し休養したが、復帰戦の8月28日富邦ガーディアンズ戦では、4回にCPBL初打点となるタイムリー、6回に初本塁打となるソロを放つなど、3安打4打点の大活躍。MVP(日本のお立ち台に相当)に選ばれ、チアリーダーの「RakutenGirls」にリードされながら、受賞者恒例のダンスを照れながら披露している。

(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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