「その気持ちが辞めることに」 不振で2軍落ち…西勇輝をよみがえらせた先輩の助言
先発の西勇は2安打完封で今季7勝目をマーク「鳥肌が凄かった」
■阪神 1ー0 巨人(12日・甲子園)
阪神は12日、甲子園で行われた巨人戦に1-0で勝利し、9月負けなしの9連勝を飾った。2位・広島も敗れたため、優勝マジックは2つ減り「3」となった。この日のヒーローは2安打完封で7勝目を挙げた西勇輝投手。今季は苦しい登板が続く中、終盤に状態を上げてきたベテラン右腕は「早く“アレ”をして、みんなでビールかけをしたい」と、歓喜の瞬間を心待ちにしていた。
痺れる投手戦を制したのは、チーム最年長のベテランだった。抜群の制球力で二塁を踏ませず、終わってみれば9回を117球、2安打6奪三振の完封勝利。文句のつけようがない投球に「鳥肌が凄かった。自分の登場曲が9回に流れて。拍手が凄くて。なんて言うか、体験したことない分からない感じ」と、プロ15年目の右腕は興奮気味に試合を振り返った。
完封は予想外だった。最終回の前には「自分だけのためじゃない。10勝もかかっていない」と、岡田監督に最多セーブのタイトルがかかる岩崎にマウンドを譲ることも伝えた。それでも「1点取られるまで投げろ」と続投を告げられ、最後の力を振り絞った。
「チームが勝って、皆で1点を守り切れてよかった」。チームは首位を独走するなか、個人としては苦しみの方が多かった。7月には移籍後初めて不振による2軍落ちを経験し、ファームで約1か月半もがき続けた。どんな状況でも弱音を吐かず、目の前の試合に向け個の調整を最優先する男。だが、生きのいい若手が活躍する姿に「(1軍から)外れたことで後輩を応援する思いがより強くなった」と、初めて“弱音”も口にした。
慣れない2軍生活で自問自答する日々。そんな中、すがるような思いで引退した先輩投手に連絡したという。
「それはアカン傾向やぞ。そういう意識が辞める方向(引退)に繋がっていく。自分の貫いてきたものを変えるのは止めた方がいい。そういう気持ちになるのも、お前しか分からないこと」
自らの投球を振り返るのを避け、後輩の活躍ばかりに目を奪われる。いつしか“逃げ”に走っていたことに気づかされた。「もう1回、野球を自分中心で頑張ろうと思った。前半戦はオラオラというかバチバチしたものがなかった。改めて自分がガツガツいることが大事だった」。我に返った右腕は、復帰した8月22日の中日戦から4戦で2勝0敗。本来の姿を取り戻すことに成功した。
頼もしいベテランの復活劇に、岡田監督も「今日は西勇輝につきますね。ほんと低め低めでコントロールがよかったし、まぁ今年一番のピッチングじゃないですか」と最大級の賛辞を送った。チームは9月負けなしの9連勝でマジックは「3」。歓喜の瞬間は間近に迫っている。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)