“推し”だった元巨人選手が目の前に 女子選手が開眼して代表入り、侍Jで目指す世界一

女子日本代表・田中美羽【写真:喜岡桜】
女子日本代表・田中美羽【写真:喜岡桜】

巨人女子チームの副主将の田中美羽外野手は憧れの松本哲也コーチから指導を受けて成長

 カーネクストpresents「第9回WBSC女子野球ワールドカップ・グループB」を戦うマドンナジャパンこと女子日本代表は16日、広島・三次きんさいスタジアムで第4戦・台湾戦を戦う。不動の1番打者を務めているのが、巨人女子チームで副主将も務める田中美羽外野手。大学2年時以来、5年ぶりの代表選手となった田中は、巨人で一時代を築いた松本哲也コーチの指導のもと、成長を遂げてきた。

 最大の武器は、50メートルを6.6秒で走り抜ける“足”だ。しかし、決して順風満帆にここまで駆け抜けてこられたわけではない。高校2年生のときに初めて代表入りのチャンスを掴んだ。だが、U-18女子代表のセレクションは、書類選考に受かったものの、2次試験を通過できなかった。「ショックでしたね……」と快足に自信があっただけにショックが大きかった。

 中学の頃からずっと日本代表のユニホームに憧れた。だが、「盗塁の数だったりスピードだったり、突出している何かを持った選手じゃないと代表にはなれない」と、そう簡単には叶わない夢であることを思い知った。選考落ちの悔しさを糧に、大学、クラブチームで誰にも負けない走力を突き詰めていった。

 2023年春、大きく成長する転機に恵まれる。2009年に新人王やゴールデン・グラブ賞に輝いた、巨人の女子チームで指導する松本コーチとの出会いだ。根っからのG党である田中は「高校生のときから松本コーチの動画を見漁っていました」と、照れ笑いを浮かべた。それだけプロ野球選手は遠い存在で、その中でも松本はヒーローのような存在だったのだろう。

ジャイアンツ女子チーム・松本哲也コーチ【写真:荒川祐史】
ジャイアンツ女子チーム・松本哲也コーチ【写真:荒川祐史】

Baseball5と女子野球の2競技で日本代表、世界の頂点へ歩み続ける

「盗塁は単純な脚力だけじゃなくて、投手との駆け引きの仕方や、どこを見てスタートをするか」と説き、巨人女子チームの試合時には「このピッチャーだったらこう」と何パターンにも及ぶ細かなアドバイスを受けた。実戦での成功体験が田中の心を支えている。

 さらに、打球に対する積極性も、野球とラグビーの二刀流だった師匠のガッツ溢れるプレーに影響されている。身長155センチと小柄ながら内外野どちらも守れるユーティリティ性を持ち合わせ、代表チームでは主に右翼の守備につく。

「女子野球では、ライトにボールが飛んで来たら『ファーストでアウトを1個取ってやる!』って、内野と同じ気持ちで攻めるんです。内野と外野で全然違うこともありますが、ライトは唯一、外野でゴロアウトを取りに行けるポジション。そこがライトの楽しいところです」と、女子ならではの見せ場に胸を張る。

「もっと高いレベルを目指したい」。熱い感情に突き動かされ、メキシコで行われたBaseball5(ボール1つでできる1チーム5人制、男女混成の新競技)初の世界大会でも、昨年、日本代表として銀メダルを持ち帰った。悲願だった野球日本代表「侍ジャパン」女子代表入りを叶えた田中の足は、ユニフォームを脱ぐ日まで止まらない。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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