“気遣い”も「普通にヒットされました」 23歳右腕が引退試合の木村から受け取った言葉
6回以降の続投志願も…首脳陣“却下”「気持ちは受け取っておく」
■西武 4ー1 日本ハム(20日・ベルーナドーム)
西武5年目のホープ・渡邉勇太朗投手は20日、本拠地ベルーナドームで行われた日本ハム戦で、今季初登板初先発を初勝利で飾った。5回までに投球数は94球に上ったが、2安打3四球無失点に抑えた。この日は、2021年8月にトレードされるまで西武に足かけ15年間在籍した日本ハム・木村文紀外野手の引退試合でもあった。
渡邉は試合前、「4番・右翼」でスタメン出場する木村から「普通に勝負しよう」と声をかけられていた。球界で長年活躍した野手の引退試合では、相手投手はど真ん中のストレートだけを投げるようなケースもある。しかし、高卒5年目で今季初登板・初先発の渡邉にとっても、今後に関わる大切な試合だけに、木村が気を遣ったのだろう。
初回2死一塁での木村の第1打席は、6球中3球がカットボールで右飛に打ち取った。「走者がいたので変化球を多く使いました」と渡邉。4回1死の第2打席では、初球の真ん中やや内角寄りの147キロ速球をとらえられ、左翼線二塁打を浴びた。「普通に抑えにいって、普通にヒットされました。カウントを取りにいった球ですが、そこを仕留めのはさすがだと思います」と脱帽。それまで無安打2四球に抑えていた渡邉にとって、この日最初に打たれたヒットでもあった。
「立ち上がりは緊張しました。球数と時間を要してもいいから、とにかく0で帰ってくることを意識してマウンドに上がりました」と言う通り、最速152キロの速球を軸に、カットボール、スプリットなどを織り交ぜ、丁寧にコースと高低を投げ分けた。6回以降の続投を志願するも、首脳陣から「気持ちは受け取っておく」と“却下”され、「球数を使い過ぎたことが反省点。もう1~2回行きたかった。任せてもらえる投手になりたいですし、5回で降板したことは悔しいです」と満足はしていない。
浦和学院高時代の同級生・蛭間とスタメンそろい踏み
191センチ、95キロの恵まれた体格は、計り知れない潜在能力をうかがわせる。昨季は1軍開幕ローテ入りしたが、開幕3戦目のオリックス戦で3回6失点(自責4)でKOされるなど結果を残せず、チャンスをつかみ切れなかった。今季は2軍で安定した投球を続けるも、1軍の先発陣が好調で、これまで1度もお呼びがかからなかった。松井稼頭央監督は「真っすぐの強さ、腕の振りが素晴らしかった。何よりも、しっかり相手打者に向かっていってくれた」と称賛。1軍定着へ、これからが勝負になる。
浦和学院高時代の同級生であるドラフト1位ルーキー・蛭間拓哉外野手も「7番・右翼」で出場し、スタメンそろい踏み。蛭間は3打数無安打1三振に終わったが、渡邉は「もっと苦しい場面で打ってくれるのが拓哉。今後に取っておきましょう」と笑った。
21日が23歳の誕生日。木村は17年間のプロ生活に終止符を打ったが、渡邉の本領発揮は本当の意味では、まだ始まってもいない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)