当てられないけど負ける悲劇 山本由伸超えの「68.6%」も…中日21歳、2桁黒星の“ワケ”
10敗を喫しながらも特筆すべきデータを残す中日・高橋宏
ピッチャーがいくら好投しても、打線の援護がなければ勝つことができないのが野球というスポーツ。今季も、打者のバットにもかすらせない見事なピッチングを見せながら、黒星が積み重なっていった“不運”な投手がいる。最たる例が中日の高橋宏斗投手だ。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)代表にも選出された21歳右腕は、今季23試合に先発登板し、防御率2.40はリーグ5位ながらも6勝10敗と負け数が2桁に乗ってしまった。(成績は21日現在)
とはいえ、高橋宏のピッチング内容は素晴らしいものだ。セイバーメトリクスの観点から野球の分析を行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)のデータを参照すると、特筆すべきは、対戦打者がスイングした際に打球(ファウルボールを含む)が発生した割合を示す「コンタクト率」。68.6%は12球団トップの低さで、セの防御率1位・村上頌樹投手(阪神)の74.9%、パの防御率1位・山本由伸投手(オリックス)の74.3%と比べても、いかに「バットに当てられていないか」がわかる。
さらに圧倒的なのは、ストライクゾーン外への投球をスイングした際に打球が発生した割合を示す「ボールゾーンコンタクト率」が、43.7%と低い点だ(2位のDeNA・今永昇太投手が53.8%)。これはやはり、決め球のスプリットでいかに空振りさせているかの証拠だろう。フォーク(スプリット)による失点増減の合計を示す指標の「wSF」(プラスが大きければ結果が良かったことを表す)は15.9と、これも12球団トップに君臨している。
それでも勝てないのは、ひとえに打線の援護のなさに尽きる。9イニング当たりの援護点「RS/9」は、同僚の柳裕也投手の2.22に次ぐ2.53と、12球団ワースト2位。6月4日の交流戦・オリックス戦(バンテリンドーム)では、今季パを制覇する強敵相手に7回を投げて13三振を奪いながら白星に結びつかなかったゲームもあった。クオリティスタート(6回以上を自責点3以内)でもなかなか勝てない現状だが、少しでも打線の援護を信じて投げ続けてほしい。
(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)
データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。