開幕1か月は2軍で本塁打ゼロ 悩める大砲候補をアシスト…“覚醒”呼んだコーチの言葉
2年目の広島・末包昇大が23日の巨人戦で2打席連続本塁打
5年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出を決めた広島に待望の大砲候補が現れた。23日の巨人戦(東京ドーム)で、末包昇大外野手が2打席連続本塁打。今季初の猛打賞も記録し、逆転勝利に大きく貢献した。8月は5本塁打で9月もここまで3本塁打。主力の離脱で巡ってきたチャンスを2年目の27歳が掴みつつある(成績は24日時点)。
3位DeNAに1ゲーム差に迫られて迎えた23日の巨人戦。末包は「6番・ライト」でスタメン出場し、同点の7回に菅野智之投手から勝ち越しの本塁打を放つと、続く8回の打席でも今季10本目となるアーチを描いた。プロ2年目での2桁本塁打は、球団では2013年に11本塁打を放った菊池涼介内野手以来。巨人戦では打率.344、6本塁打と“キラー”ぶりを発揮している。
今や1軍に欠かせない戦力に成長した末包だが、ここまでの道のりは容易いものではなかった。2021年ドラフト6位で大阪ガスから入団。1年目から開幕スタメン入りすると4月終了時点で打率.333、19安打、1本塁打を記録。カブスに移籍した鈴木誠也外野手の穴を埋める活躍を見せた。
しかし、以降は出場機会が減っていく。原因は1軍クラスの投手が投げる外角変化球への対応にあった。意識するあまり、持ち味である長打力が影をひそめ、2軍での調整を余儀なくされた。迎えた2年目の今季も開幕を2軍で迎え、4月下旬まで打率は2割前半で本塁打はゼロ。結果の出ない日々が続いていた。
新井2軍コーチが説き続けた打席での“力の使い方”
悩める末包に変化の兆しが見え始めたのは6月。感覚を掴んだのか安打を量産して打率は3割近くまで上昇し、6月13日に1軍昇格を果たした。昇格が決まった直後、新井良太2軍打撃コーチは、末包が水を得た魚のように打ち始めた要因を「力の入れ方と打席での構え方」にあると明かした。
「力任せに振らなくなったのが一番の成長でしょうね。末包は力があるだけに、パワーで打とうとしがちでした。ただ、打球を遠くに飛ばすには力を抜くことも大切。その力の使い方が上手くなったと思いますね。もう一つはスイングの変化。うまく体を使い、バットを縦に振ることができるようになったことで飛距離も出るようになりました」
悩む末包に新井コーチは“力の入れ方”の重要性を説き続け、それが飛躍につながった。また「凡打でも一生懸命走る姿はチームに好影響を与えてくれていました」と、不振が続いても諦めることなくプレーを続けた末包の姿も高く評価していた。
西川龍馬、野間峻祥ら、開幕からレギュラーとして活躍してきた主力が離脱しているチーム状況を考えると、試合の流れを変える長打を打てる末包は貴重な存在。ひたむきに2軍で汗を流しチャンスを掴み取りつつある27歳が、“逆襲”を目論むチームに大きな力を与える。
(真田一平 / Ippei Sanada)