「世界一優しい」山田哲人も心酔する人間性 プロ生活に幕…名脇役に徹し切った守備職人
ヤクルト、日本ハムで計11年間「苦しい時期、辛い時期の方が多かった」
日本ハムの谷内亮太内野手が26日、エスコンフィールドで引退会見を行った。チームに欠かせない存在として厚い信頼を得ていた32歳。自らの生きる道を模索し、愚直に努力し続けて居場所を掴み、プロ11年間を駆け抜けた。
「やりきったなと思います。正直入った時はプロで10年間やれるとは思ってなかったですし。何度も『今年で終わりなんじゃないかな』っていう時もあったので、それを考えるとよくここまでやってきたなと思います」
谷内はスッキリした表情で思いを口にした。「苦しい時期だとか辛い時期の方が多かった」というのが本音だろう。2012年ドラフト6位でヤクルトに入団。当然、バリバリのレギュラーを目指して飛び込んだ世界だったが、2月の春季キャンプで宮本慎也氏らをはじめとした周囲の高いレベルにいきなり衝撃を受け「レベルが全然違うなって思いました」と振り返る。
それでも谷内は、いつも、どんな時も、とにかく練習していた。定評のあった守備に磨きをかけ、黙々とバットを振り込んで出番を待った。ヤクルト時代の最多出場は2014年の43試合だったが、2018年オフに日本ハムへトレード移籍。これが転機となった。
後輩たちへ「誰しも辞めるときは来る。後悔がないように頑張ってほしい」
「正直、スワローズの時は何が何でもレギュラーを取りたいと思ってましたし、空いてるポジションならどこでもレギュラーでやりたいと思ってましたけど、ファイターズに来て、次は何とか1軍でやりたいと思ったときに、今このファイターズなら守備で1軍に貢献できて、自分も生きていけるんじゃないかなって思ったのが最初だと思う。本当にいいタイミングでトレードしていただいたなと思います」
レギュラーにはなれなくても、谷内には谷内の道があった。続けた努力が実を結び、高い守備力で重宝された。2020年に50試合に出場すると、2021年にはキャリアハイの106試合に出場。スタメンはわずか9試合だったが、途中出場でも自らの仕事を全うした。
この日、野球評論家の鶴岡慎也さんから「守備と打撃、本当はどちらが好きですか?」と聞かれると「やるのはバッティングです。でもやっぱり守備で生きていかないとこの野球界で生き残れないなと思ったので、振り切ってやってましたけど、もうちょっと打てたら良かったのになと思います」と笑った。
中学、高校、大学と主将を務めたキャプテンシーを持ち、その人間性を誰もが高く評価する。若き日の山田哲人が「世界一優しい」と慕っていたのは有名な話で、谷内を頼りにする後輩は後を絶たなかった。そんな後輩たちへのメッセージを聞かれると「やっぱり、誰しもいつか辞めるときは来ると思うので、そのときに後悔がないように毎日頑張ってほしいですね」。谷内のその言葉には、重みがあった。
(町田利衣 / Rie Machida)