松井監督も驚く急成長「一番変わった」 “練習の虫”が叩き出す驚異の数値「.495」
佐藤龍世が「つなぎの気持ち」で決勝三塁打…月間出塁率は驚異の.495
■西武 2-1 楽天(27日・ベルーナドーム)
西武は27日、ベルーナドームで行われた今季本拠地最終戦の楽天戦を2-1の勝利で飾った。最後のお立ち台に上がったのは、今季チームに復帰した佐藤龍世内野手。1-1で迎えた8回に決勝の適時三塁打を放った。プロ5年目26歳にして急成長しており、松井稼頭央監督は「今年一番変わった選手」と目を細めた。
「3番・三塁」で出場した佐藤龍は、1-1の8回2死二塁という勝負所で右打席に入った。「後ろに中村(剛也内野手)さんがいたので、つなぎの気持ちを持って打席に立ちました」。その言葉通り、楽天2番手・渡辺翔太投手に対して4球ファウルを打って粘る。フルカウントからの8球目。低めのカットボールに食らいつくと、打球は前進守備の左翼手の頭上を越え、チームに決勝点をもたらした。
9月に入ってからの打棒がすごい。全22試合にスタメン出場し、月間打率.324(68打数22安打)、月間出塁率.495。ヒットを量産するだけでなく、1試合1個ペースの22四球を記録している選球眼も特筆される。最近10試合はクリーンアップに定着(3番が6試合、5番が4試合)し、日に日に存在感を増している。
2018年ドラフト7位で富士大から西武入りし、2021年シーズン中にトレードで日本ハムへ移籍。昨季オフに、山田遥楓内野手との交換で西武に復帰した。復帰1年目の今季前半は出場機会が少なく“第3捕手”の役割もこなせることから、チームの最後の駒としてベンチを温めるケースもあったが、徐々に打撃に活路を見出した。
26日に150キロが胸を直撃「痛いですけど、この通りできるので大丈夫」
佐藤龍のプロ入り当時の2軍監督で、手塩にかけてきた松井監督は「龍世がプロに入ってきた頃から知っていますが、今年、意識が一番変わった選手だと思います。これほど試合に多く出るのは初めてですが、毎日どう準備するかを含めて、大きな成長につながったシーズンではないでしょうか」と称賛。佐藤龍も松井監督には特に恩義を感じていて、「監督の笑顔を見ることが一番うれしい」と繰り返している。
練習量は人一倍。ナイター終了後も室内練習場で打ち込むのが日課で、球団公式グッズの佐藤龍のタオルには『帰ってきた練習の虫』との言葉が添えられている。「今年は『追い込まれてからでも打てる』という自信ができて、その分打席で余裕を持てています」と明かす好調ぶりも、練習のたまものだろう。
26日のオリックス戦で、宇田川優希投手の150キロ速球が胸を直撃する死球を受けたばかり。お立ち台でそれを聞かれると、「い、い、痛いですけど、この通りできるので大丈夫です」と返答し、スタンドのファンを沸かせた。ベンチウォーマーからスタメン、さらにクリーンアップへと駆け足で階段を上ってきた26歳。真価を問われる来季が、野球人生を左右する勝負の年となりそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)