「鳥肌が立った」本拠地が揺れた“1打席” 空気一変させた35歳…オリ3連覇の舞台裏
オリックス・野口智哉内野手が振り返る決勝打
鳴り止まない歓声に身震いした。オリックスの野口智哉内野手は、3連覇を決めた9月20日のロッテ戦で、京セラドームの“本気”を肌で感じていた。歓喜の胴上げを目撃しようと、超満員が詰めかけた本拠地。「鳥肌が立ちました」と24歳が言うのは、35歳のベテラン野手・T-岡田外野手が打席に向かった際の声援だった。
1点を追う7回2死二塁。この日に昇格即スタメン出場していたT-岡田は四球を選んでチャンスメークに成功した。一塁側ベンチからネクストバッターズサークルに歩を進めていた野口は、熱狂に包まれたスタンドを感じ、ヘルメットを深くかぶった。
「Tさんの打席で(球場の)空気が完全に変わりました。盛り上がりが、今までと全然違った。本当にヤバかったです」
紅林の適時打で2-2と同点に追いつくと、野口に打席が回ってきた。内角に迫ってきた151キロの直球を振り抜くと、白球は右翼線にポトリと落ちた。24歳の誕生日に放った勝ち越し適時打は、3連覇を決める一撃となった。
数日後、冷静に状況を振り返った野口は「打ったときはガムシャラだったので(ヒットで)良かったぁという感じでした」とニコリ。一塁ベース上で絶叫し「本当にうれしかったんです。ここで決めたら美味しいなと思って打席に入ってました」と強心臓ぶりを明かした。
場内の大興奮が収まらない一打に「Tさんのおかげです。Tさんの存在、ファンの方の歓声が僕の1本を生んでくれたと思います」。謙虚に振り返り、雰囲気を作ってくれたプロ18年目の先輩に一礼した。
(真柴健 / Ken Mashiba)