投手で0勝の先輩に贈った“記念球” 「ください!」に応えた1勝…山本由伸の思いやり
オリックス・佐野皓大外野手が初めて手にしたウイニングボール
思わぬ“記念球”をプレゼントされ、驚きと喜びが交差した。オリックスの佐野皓大外野手は、27歳の誕生日を迎えた9月2日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で、人生初のウイニングボールを手にした。エース・山本由伸投手から、感謝の想いが込められた1球だった。
「試合前の円陣で、思いついてノリで言ったんです。僕が声出しの順番だったので『今日、誕生日なのでウイニングボールください!』って言ったら、本当にプレゼントしてくれました。(試合の)最後に(右翼手の)茶野が捕って、(左翼手の)小田さんに渡って(勝利の)ハイタッチの時に『はい!』って言って、小田さんが僕に持ってきてくれました」
仲間たちから贈られた1球には、深い意味が込められていた。佐野皓は2014年ドラフト3位で投手としてオリックスに入団。プロ1年目の2015年は2軍で17試合に登板するも0勝8敗、防御率7.28の成績にとどまった。
佐野皓は高卒プロ3年目の2017年オフに“野手転向”を決意。一時は育成選手契約に切り替わり、背番号「121」から再出発した。2018年7月31日に内野手として支配下登録選手に返り咲き、その後に外野手へ転向。俊足を生かすために、両打ちにも挑戦した経緯がある。
記念球は実家の焼肉店に送る予定
それだけに、北の大地でプレゼントされた1球に感謝を止めない。「僕は投手で入団したんですけど、投手ではなかなか活躍できなかった。だから、ウイニングボールは、まともにもらったことがなかったんです」。プロ9年目で初めて手にした記念球は、仲間からの思いやりが詰まっていた。
この試合に先発した山本は2学年下の後輩。佐野皓は7回無失点の好投で今季13勝目をあげた右腕にペンを渡し「(記念球は)由伸からサインをもらいました」と笑顔を見せた。担当スカウトが同じという縁もあり「ずっと2軍時代から可愛がっている後輩です」と爽やかに笑った。
後輩思いの佐野皓は「毎年(山本に)誕生日はプレゼントを渡していますね。今年は黒色のパーカーをプレゼントしました」。“お返し”にもらったウイニングボールは「今は家に飾っています。(大分の)実家が焼肉店なので、いずれ送ろうかなと思っています」。苦節9年。仲間に恵まれ、新しい思い出ができた。
(真柴健 / Ken Mashiba)