広島・新井監督の“神采配”はなぜ生まれた? 見逃さなかった「隙」と序盤の拙攻
広島は1点を追う8回に四球、犠打、盗塁、スクイズで同点に追いつく
■広島 3ー2 DeNA(14日・マツダスタジアム)
セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦は14日、マツダスタジアムで行われ、広島が延長11回の接戦の末に、3-2でDeNAを下し、ファイナルステージ進出へ王手をかけた。劣勢ムードを吹き飛ばした8回の同点劇を、野球評論家の新井宏昌氏は「わずかな隙を見逃さなかった新井貴浩監督の好采配だった」と絶賛した。
新井監督のタクトで今季16勝の最多勝左腕を攻略した。1点を追う8回。先頭のデビットソンが四球を選ぶと、すかさず代走・羽月を送った。犠打で1死二塁の好機を作ると、菊池の初球に二走・羽月が三盗に成功。ここで菊池がスクイズを決め、終盤で同点に追いついた。
捕手の山本が送球できないほどの完璧なスタート。緊迫した場面で価値ある走塁を見せ、ノーヒットで同点に追いついた攻撃に、新井氏も「拙攻もありながら宮崎の2ランで先制し、中盤まではDeNAペース。羽月は東の隙を突き勇気ある走塁を見せた。スクイズのスタートも完璧。右投手なら簡単にスタートを切れない。左投手だからこその“隙”を見逃さなかった」と評価した。
中盤までは苦しい展開だった。3回1死二、三塁の場面では菊池が3球三振、続く野間もDeNA・林の好守に阻まれ遊ゴロに倒れ痛恨の無得点。「ストライクの直球を見逃し、ボール球に手を出す。今日の菊池は少し淡白に見えた。新井監督もその辺りを把握していたからこそ、勝負所でサインを出せたと思います」。我慢強く耐えながら、試合の流れを引き寄せ攻略した。
セ・リーグは2016年から続けて3位チームがファイナル進出
新井監督の勝利への執念が勝った。2位通過の広島は引き分けでもCSファイナル進出へ大きく近づくが、同点の延長10回からは今季26試合全てで先発登板だった九里をリリーフで投入。11回途中まで粘りの投球を見せ、最後は途中出場の秋山が劇的なサヨナラ打を放ち試合を決めた。
「短期決戦はいかにシーズン同様の試合運びができるか。内容ではなく、結果が求められる。そんな中でもリリーフ経験のある九里をマウンドに送るなど、選手たちが監督の思いにしっかり応えた。個々の役割を果たしたカープは、まさに総力戦だった」
これまでセ・リーグのCSファーストステージは、2016年以降、3位チームが続けてファイナルステージに進出している。とはいえ「打線のつながりをみても広島の方が状態は上。菊池、野間、西川、堂林と上位に安打が出ているのも大きい。競った展開に持ち込めることができれば」と新井氏。
15日の第2戦は森下が先発マウンドに上がる。勢いそのままに連勝し、2位チームが陥っていた“負の歴史”に終止符を打つ。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)