支配下指名が1人→6人急増、顕著だった独立L勢の躍進 専門家が語る高卒にない“魅力”
社会人の野手で4年ぶり1位指名のENEOS度会は3球団競合の末DeNAへ
26日に行われた「2023 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で、独立リーグ勢からは6人が指名された。昨年の支配下指名1人から急増。一方、3球団の1位指名が競合しDeNAが交渉権を獲得したENEOS・度会隆輝外野手は、社会人野手としては2019年の小深田大翔内野手(大阪ガス→楽天)、佐藤直樹外野手(JR西日本→ソフトバンク)以来4年ぶりの1位指名となった。躍進の理由を、現役時代にロッテなどで日米通算234セーブを挙げ、現在社会人のエイジェックの投手コーチを務める小林雅英氏が分析した。
今年は阪神が四国アイランドリーグplus・徳島の椎葉剛投手、ロッテも日本海リーグ・富山の大谷輝龍投手をそれぞれ2位で指名。西武は徳島の宮澤太成投手、ヤクルトはBCリーグ・新潟の伊藤琉偉内野手、中日はBCリーグ・茨城の土生翔太投手を5位。DeNAは徳島の井上絢登外野手を6位で指名した。昨年支配下で指名されたのは、中日5位の濱将乃介内野手(日本海リーグ・福井)ただ1人だった。
一方、社会人の支配下指名は昨年の14人から13人となったが、投手12人・内野手2人だった昨年に比べると、投手9人・内野手2人・外野手2人とバラエティに富んでいる。小林氏が社会人で注目するのは、ソフトバンクが5位で指名したロキテクノ富山の澤柳亮太郎投手だ。ロキテクノ富山は2012年に設立された比較的新しいチームだが、現役時代に阪神、西武、ヤクルトで投手としてプロ経験のある藤田太陽氏が監督。西武、ソフトバンクなど4球団で捕手として活躍した細川亨氏、プロ4球団に在籍した水田圭介氏がコーチを務めている。
富山・吉岡雄二、新潟・橋上秀樹らプロ出身監督の教え子が支配下指名
小林氏がコーチを務めるエイジェックも、まだプロ選手が生まれていないが、現職に就任した2021年に初の都市対抗を果たすなどレベルアップしている。小林氏は「僕らプロ経験者は、旧知のスカウトたちと同じ目線でざっくばらんに話すことができますし、他のチームの選手の情報も含めて提供できる。アマチュアのチームや独立リーグを指導するプロ経験者が増えている中、我々がいることで、技術の向上はもちろんですが、そういうプラスアルファのメリットが生まれるのはうれしいですね」と述懐する。
確かに独立リーグも、今年の支配下指名選手が在籍した徳島の岡本哲司監督、富山の吉岡雄二監督、新潟の橋上秀樹監督はいずれもプロ経験者である。実際に、昨年オリックスの育成ドラフト4位で徳島から入団した茶野篤政外野手が、開幕直前に支配下登録を勝ち取った上、1軍開幕スタメンにも名を連ね、91試合出場の実績をあげたことも、追い風になったかもしれない。
プロ経験のある指導者の存在が、球界の各カテゴリーを活性化させ、NPB入りへの流れを速やかにするなら何よりだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)