屈辱の15失点でよぎった“イップス”　心が壊れかけたOP戦…立ち直った左腕の分岐点

広島からドラフト2位指名を受けた大商大・高太一「15点取られたのがターニングポイント」

「2023 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が26日に行われ、大商大の高太一投手は広島から2位指名を受けた。母校のキャンパス内で吉報を待っていた左腕は、焦る気持ちを落ち着かせていた。一足先に、隣に座る上田大河投手が西武から2位指名を受け「上田が先に指名されて不安な部分もありました」と額の汗を拭った。

　指名の直前には、思わぬハプニングにも見舞われた。ドラフト中継を映していたスクリーンが数分間、画面が白黒になった。中継が見られない間の指名も「もしかしたら……と思いました（笑）。（上田と）2人、指名されたことが幸せだと思いました」と安堵の表情を浮かべた。

　大商大での通算成績は関西6大学リーグで12勝0敗、防御率1.77の数字を収めた。公式戦で1度も負けたことのない左腕は「無駄な四球を出してしまうと、こちらが0点に抑えていてもリズムに乗れないので、早いテンポを意識しています」と、攻撃陣にも流れを呼ぶ投球を心掛ける。

　広陵高時代には3年春に甲子園の舞台に進んだ。その後も順風満帆な野球人生かと思われたが、失意の中にいた時もある。「（大学2年の）近畿大学とのOP戦で（5回）15点取られたのがターニングポイント。イップスに近いというか、心が壊れかけた試合です」。苦しんだ日々を明かす。

「しんどい時もありましたけど、腐らずに這い上がってやろうというのが成長につながっていると思います。あの時は肩のトレーニングをしたり、体重を増やしたりしてスピードが上がった。（体重は）11キロ増えました。（球速は）13、14キロ速くなりました」

　最速151キロ左腕は1年目の目標を「1年間、1軍にいること」と掲げると「20年間やり切る。長い間、活躍する選手が良い選手だと思う。20年間、1軍にいることが究極の目標です」と力を込める。苦境を乗り越えた21歳が、プロの世界でも花を咲かせる。

（真柴健 / Ken Mashiba）