最下位指名から主力続々…18年ドラフトから5年、勝ち組は? “総獲り”阪神の凄み

オリックス・中川圭太、阪神・近本光司、巨人・戸郷翔征(左から)【写真:矢口亨、荒川祐史】
オリックス・中川圭太、阪神・近本光司、巨人・戸郷翔征(左から)【写真:矢口亨、荒川祐史】

2位と3位が今年ショートのポジションを争った

「2023 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で指名された選手たちの入団後の活躍が楽しみだが、今年の日本シリーズが“関西ダービー”となったことを踏まえると、味わい深いのが2018年10月のドラフト会議である。翌2019年5月1日に「令和」に改元されたため、“平成最後のドラフト”でもあった。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が総チェックする。

「いま振り返って、2018年のドラフトが一番成功したように見えるのは阪神でしょう。獲っただけではなく、その後の5年間でうまく育成したと思います」と野口氏は言う。

同年の阪神の支配下での指名は以下の通りだ。

1位 近本光司  外野手 大阪ガス
2位 小幡竜平  内野手 延岡学園高
3位 木浪聖也  内野手 Honda
4位 斎藤友貴哉 投手  Honda
5位 川原陸   投手  創成館高
6位 湯浅京己  投手  BCリーグ・富山

 阪神は1位指名の1回目の抽選で3球団競合の末に大阪桐蔭高・藤原恭大外野手(現ロッテ)、2回目にも4球団が重なった辰己涼介外野手(現楽天)を外し、近本は「外れの外れ1位」だったが、2021年に最多安打のタイトルを獲得。今季も4度目の盗塁王に輝くなど、いまや阪神に絶対欠かせないリードオフマンだ。3位の木浪は今季遊撃のレギュラーに定着し、打っても“恐怖の8番”と相手に恐れられた。18年ぶりのリーグ優勝への貢献度は高かった。

 2位の小幡もショートの控えとして貴重な存在で、来季以降は6歳上の木浪とのポジション争いが激化する可能性がある。ライバルが2位と3位に並んでいたわけだ。6位の湯浅は昨年、59試合に登板して防御率1.09をマークし、最優秀中継ぎ投手に。今季は右腕の張りなどで15試合、防御率4.40と振るわなかったが、今後の阪神を背負う存在であることに変わりはない。

 さらに4位の斎藤も、昨年オフにトレードで日本ハムに移籍し、今年は開幕前に右膝前十字靭帯断裂の重傷を負ってシーズンを棒に振ったが、野口氏は「150キロ後半を連発するポテンシャルの持ち主。日本ハムの新庄(剛志)監督も抑えで起用する可能性を示唆していたほどで、素材としての見立てに間違いはなかったと思います」と指摘する。

チーム支配下最下位指名だったオリ・中川圭と巨人・戸郷

 阪神に次いで、オリックスの支配下指名にも目を見張らされる。

1位 太田椋  内野手 天理高
2位 頓宮裕真 捕手  亜大
3位 荒西祐大 投手  Honda熊本
4位 富山凌雅 投手  トヨタ自動車
5位 宜保翔  内野手 未来沖縄高
6位 左澤優  投手  JX-ENEOS
7位 中川圭太 内野手 東洋大

 2位の頓宮が今季、打率.307で首位打者のタイトルを獲得。5位の宜保も今季は二塁手として37試合、遊撃手としても4試合スタメン出場した他、守備固めや代走としても貴重な役割をこなした。そしてなんといっても“最下位指名”の中川圭が、センターを中心に内外野をこなすユーティリティ性を発揮しつつ、2年連続で規定打席をクリアし主力の1人に育っていることが特筆される。

 1位の太田は今季も左手首の腱鞘炎で手術を受けるなど、1軍定着を果たせなかったが、昨年の日本シリーズ第7戦で初回先頭打者初球本塁打を放つなど無類の勝負強さを見せており、野口氏は「これから主力に成長する可能性も十分ある」と買っている。

 この年のドラフトは、甲子園春夏連覇を達成した大阪桐蔭高の藤原と根尾昂内野手(現中日投手)、報徳学園高・小園海斗内野手(現広島)、金足農高・吉田輝星投手(現日本ハム)らが“目玉”だった。野口氏は「来季が投手専念2年目の根尾をはじめ、みんな高卒5年目でまだまだ若いですから、もうひと伸びもふた伸びもしてほしい」と期待を込めた。

 ちなみに巨人は、1位の高橋優貴投手が昨年左肘のクリーニング手術を受けた影響などで、やや伸び悩んでいるが、支配下最後の6位で指名した聖心ウルスラ学園高・戸郷翔征投手が、2年連続12勝で“新エース”にのし上がった。野口氏は「戸郷を評価したスカウトの殊勲でしょう」とうなずく。

 今年の日本シリーズでは、2018年ドラフト組同士の打ち合いも楽しみの1つになる。その他の同期生たちも、大舞台での活躍を目指して切磋琢磨を続けてほしい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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