吉田正尚はメジャーでも「恐れられる」 性格にも太鼓判…百戦錬磨の平野佳寿が証言する凄み

Rソックス・吉田正尚(左)とオリックス・平野佳寿【写真:ロイター、荒川祐史】
Rソックス・吉田正尚(左)とオリックス・平野佳寿【写真:ロイター、荒川祐史】

オリックス・平野佳寿、吉田正尚に「良いバッターですよ、本当に」

 かつて経験したことがあるからこそ語れる“本音”だった。オリックスの平野佳寿投手が、レッドソックスの吉田正尚外野手がメジャー挑戦1年目に見せた対応力を絶賛している。「改めて凄いなと思いましたね。良いバッターですよ、本当に」。昨季までの同僚に賛辞の言葉を送った。

 吉田は今季140試合に出場して、ア・リーグ5位の打率.289、15本塁打、72打点、8盗塁の成績を残した。春先こそは新たな環境に苦しんでいたが「あれぐらいの成績は残すだろうなと思っていました。正尚のレベルなら驚くことではないですね」と、日米通算250セーブを達成した守護神は笑みを浮かべる。

 平野佳は2018年からの3シーズンをメジャーで過ごした。メジャー挑戦1年目から救援で75試合に登板、3年間で150試合のマウンドを経験したが「僕の場合はたまたま。運もあった。1年目から投げさせてもらえて、自分のスタイルを確立させてもらえたから(3年間)乗っていけた。1年目で鳴かず飛ばずの場合、方法がわからずに苦しむパターンもありますからね」と謙遜する。

 異国の地でも堂々と胸を張った結果だった。平野佳は英語を話すことができないが、「外部からの声も、よくわからんようになるからね(笑)」とポジティブ思考を貫く。

「だからこそ、変に集中できなくなるということがなかった。そのスタイルで自分は良かったなと思っています。僕は野球をプレーしたり、トレーニングしたりしている時以外は(通訳に)『ずっと俺の横にいてくれ』と言っていましたから。英語を話せないからこそ、野球だけに集中できる。僕の3年間はそうでした。(渡米前から)話せないと諦めて、割り切って行きましたけど(笑)。自信を持って、日本でやっていたことを向こう(メジャー)に持っていった流れなのでね」

メジャーの舞台は「信頼を勝ち取っていく世界なので」

 今季から海の向こうで躍動した吉田には「彼の性格からして(英語が話せなくても)何の問題もないと思いますよ。ナイーブな選手ではないし、ブレずに自分の考えを持っている選手なのでね」と太鼓判を押す。

 数々の痺れる場面を切り抜けてきた平野佳は、日本球界屈指のヒットマンを高く評価する。「試合に対する姿勢もそうですけど、バッターボックスに立つ時、すでに整って完成している。それに投手が飲まれているイメージ。彼は何も考えていないと思うけど、相手が勝手に考えてくれる選手。そんな雰囲気、オーラが染み付いている」。対戦経験こそはないが、毎試合、ブルペンのモニター越しに熱視線を送ってきた。

 剛腕の注目数は「四球」で、2022年は80四球を選んできた吉田だが、今季は34四球にとどまった。「メジャーの投手は、それ(吉田の雰囲気)を知らないからどんどんストライクを投げてくる。でも、ここからメジャーでも『YOSHIDAは……』と恐れられるようになると思う。風格は作られていくものだからね」。来季の展望は明るい。

 蓄えた髭を触りながら、サラッと言う。「信頼を勝ち取っていく世界なので。彼は何も言わなくても結果を残して、立場を不動のものにしていくだろうと思っていますよ」。卓越したメンタルを持つ偉人たちには、問答無用だった。

○著者プロフィール
真柴健(ましば・けん)1994年、大阪府生まれ。京都産業大学卒業後の2017年、日刊スポーツ新聞社に入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間、爆速で「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者を卒業。2023年2月からFull-Count編集部へ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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