他球団の戦力外で「俺もクビかも」 2日後に予感的中も…清々しかった1年間
DeNA移籍…“当事者”笠原祥太郎が語る現役ドラフトの意義
昨オフにプロ野球で初めて実施された「現役ドラフト」から、はや1年。指名を受け、他球団に移った12人の選手は、それぞれ明暗が分かれた。中日からDeNAに移籍した笠原祥太郎投手は、わずか1年で戦力外に。それでも「僕自身にとっては、すごく良かったと思います」と噛み締める。
突然の知らせを、今でも覚えている。昨年12月9日、中日の球団代表から「ホテル来れる?」と急遽呼び出された。指定された場所に向かい、面談のテーブルにつく。前置きはほどほどに、初開催の現役ドラフトでDeNAから指名があったことを告げられた。
2016年ドラフト4位で中日に入団。2年目の2018年に6勝を挙げて頭角を現したが、開幕投手を務めた2019年のシーズン序盤に不整脈の手術で離脱を余儀なくされた。それから歯車は噛み合わなくなり、2021年からの2年間はわずか1勝。迎えた2022年のオフ、戦力外を覚悟していた中で新天地が目の前に現れた。
「クビだと思っていたのに、クビにならなかったという感じでしたかね。あのまま中日でやれたとしてもダメだったでしょうし、心機一転できる機会をもらえたと思いました」
開けた気持ちは投球に反映され、移籍1年目の今季は開幕ローテーション入りを果たした。しかし、わずか1試合の先発で2軍落ち。故障なども影響し、最終的に2試合登板で未勝利に終わった。
DeNAに感謝「自分が掴み切れなかっただけで、チャンスはもらえた」
「現役ドラフトで来て、もう1年くらいは面倒見てもらえるかな……」という淡い思いは、頭の片隅にあった。期待が覚悟に変わったのは、10月2日。ヤクルトの成田翔投手が戦力外通告を受けたニュースが目に飛び込んできた。
「あ、俺もクビになるかも」
他球団で全く関係のない選手だが、現役ドラフトで移籍1年目という共通点があった。「1年でもクビになるんだと」。予感はすぐ現実となり、2日後の4日に戦力外通告を受けた。
わずか1年の猶予期間だったが「自分が掴み切れなかっただけで、チャンスはもらえたので。そこはすごくありがたかった」。中日に残れていたとしても、きっと今季の春季キャンプは2軍スタートだった。それが“新加入”の期待値によって、DeNAでは1軍スタートに。外的要因や環境のせいにせず、ただ自分の責任だと言い切れる結果が、清々しい。
今年の現役ドラフトは12月8日に実施される。「僕はすごくいい制度だと思います。環境が変わることで、気持ちも大きく変わると思うので」。経験者のひとりとして、これから新天地に向かうであろう選手たちの健闘を願っている。
(小西亮 / Ryo Konishi)