こだわり深い3万円の“自己投資” 体重増へ…21歳・山下舜平大が愛用する秘密兵器
オリックス・山下舜平大、愛用する低温調理器に「管理は趣味」
貪欲な姿勢で、進化を続けていく。今季9勝をマークし、パ・リーグの新人王に輝いたオリックスの山下舜平大投手は「低温調理器」を大阪・舞洲の球団寮に取り入れ、食生活の面からもパワーアップを目指している。
高卒プロ3年目の2023年は、開幕投手に抜擢されるなど16試合に登板。9勝3敗、防御率1.61の好成績を収めた。シーズン後半には「腰椎分離症」を患って戦列を離れ、目標とした2桁勝利には届かなかったが、チームの3連覇に大きく貢献した。
育ち盛りの21歳は「食」にこだわる。普段、揚げ物はほとんど口にせず「食生活の管理は趣味みたいなもの。食べ物を摂るタイミングやたんぱく質、ビタミンなどを理解して食べるのが面白いです」と屈託のない笑顔をみせる。
そう考えるようになったきっかけは、高卒プロ2年目の2022年にあった。身長が伸び続けたため、体の成長とトレーニングのバランスを考え、5月から9月まで全体練習とは別メニューでの調整で過ごした。その期間で「体に良い食生活」に興味を持ったという。さらに食生活の改善に加え、ウエートトレーニングの効果で体重が4キロも増えた。増量に成功したことで、球速が上がり、球威が増すことへとつながり、自信を深めた。
2024年に向けて取り組んできた「体重増加」
まだまだ成長したいと思ったタイミングで目をつけたのが「低温調理器」だ。2023年10月頃に約3万円で購入。温度や時間を調節できる筒状の器具を水の入った鍋にセットし、フリーザーバッグに入れた食材を5~95度の低温で温めるもので、焼く、煮る、蒸すなどに続く調理方法。フライパンや鍋を使い高温で調理する方法と違い、食材の栄養素を逃がすことが少なく、素材の味を引き出せる。高温で加熱しないため、たんぱく質の凝固や肉汁の流出を抑えることができ、食材を最も美味しくなる温度で調理することができるのだという。
「(食べるまで)時間はかかるのですが、本当に美味しく調理できるんです。鶏肉も水分が飛ばないから、パサパサしないで柔らかくなるんですよ」と山下は声を弾ませて効果を説明する。普段は鶏肉などの食材はスーパーで購入し、球団寮の食堂で調理しているが、11月に行われた高知市での秋季キャンプにも持参し、ホテルの自室で使っていた。
今オフに取り組んでいるのは、体重の増加。高知での秋季キャンプではシーズン終了時より2、3キロ増えた。投球練習ができる1月の自主トレに向けて、体重増を球威アップにつなげる考えで進めてきた。「パワーアップが目的です。増えすぎないように、トレーニング量や運動量を見ながら調整していきます」と対策にも抜かりはない。美味しく栄養価の高い食材が調理できるアイテムで、さらに成長した姿を見せる。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)