バス車中で“絶叫”…台湾でも大谷翔平に「大騒ぎ」 日本人が見た異例の熱狂
台湾・台鋼ホークスで投手コーチ補佐を務める、元阪神の福永春吾
世界最高峰の名勝負は、台湾でも歓喜が起こっていた。昨秋から台湾・台鋼ホークスの投手コーチ補佐を務めている元阪神の福永春吾コーチが“あの日”を回想した。「ものすごい盛り上がりでしたね。バスの中も絶叫する選手もいました」。熱狂は日米だけにとどまらなかった。
2023年3月21日(日本時間22日)、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝で、9回2死から大谷翔平投手がマイク・トラウト外野手を空振り三振に仕留めた。当時、台湾の社会人チームである「台中市成棒隊」でプレーしていた福永は「遠征に向かうバスの中が大騒ぎでした」と振り返る。
「3-2で1点差でしたよね? 1球で展開が変わる場合があるので、台湾人の選手も必死に携帯やタブレットで日本とアメリカの試合を見ていました。1球に対してのリアクションで(車中が)盛り上がっていましたね」
息を飲む展開に、誰もが酔いしれていた。「ちょうど、試合会場に到着したタイミングで大谷くんとトラウトが対戦していたんですけど、バスを降りる選手はいなくて、見入ってました。優勝が決まった瞬間、歓喜の舞いでしたね」。両国の健闘をたたえて起こった拍手だった。
台湾選手も熱中する、大谷翔平、山本由伸、吉田正尚らのプレー動画
台湾では、日本でのプレーを希望している選手が増えたという。「もちろん、メジャーリーガーに憧れてアメリカを応援する選手もいましたけど、親日の選手もたくさんいます。日本でプレーしたい選手も多いので、日本語を覚えていますよ。僕も台湾の言葉を覚えて、コミュニケーションを取れるようにしています」。技術伝達には、意思疎通が必要不可欠となる。
「みんな、日本人選手のムービーを見て勉強していますね。日本を代表する選手へのリスペクトがあって、興味があります。大谷くん、山本(由伸)くん、吉田正尚さん、村上(宗隆)くん……。熱中していますよ、台湾の選手たちは」
福永は大谷と同学年の29歳。現役を引退して、コーチ業に就いたばかりだ。「言葉にできないくらい凄い存在ですよ、大谷くん。WBC優勝したあの瞬間は、1人の日本人として誇りを感じた瞬間でした」。頂上決戦に注目していたのは、日米の野球ファンだけではなかった。
(真柴健 / Ken Mashiba)