巨人・菅野に滲む危機感「アピールしなければ」 異例の連投…見つめる阿部監督の思惑
「いいボールと悪いボールの差が小さくなり、まとまりがありました」
「僕はアピールしなければならない立場」。巨人・菅野智之投手は宮崎キャンプ序盤の時点で既に、近年ほとんど口にしていなかった言葉を何度か繰り返している。有言実行。第1クール4日間で3度もブルペン入りし、実に精力的な姿を見せている。
第1クール最終日の4日。菅野は捕手を座らせ、カットボール、スライダー、カーブをまじえ30球を投げ込んだ。リリースの瞬間に「んぁ~!」と声が出るシーンもあり、気合が乗っている。「前回(キャンプ初日)に比べると、いいボールと悪いボールの差が小さくなり、まとまりがありました。一歩前進したなと思います」と笑みを浮かべた。
キャンプ初日に33球を投げ込んだ後、本来は“中2日”でこの日のブルペン投球を行う予定だった。ところが、前日(3日)の全体練習後、急きょブルペンに入り50球を投じていた。
予定外のピッチングを入れることは珍しいが、「初日があまり良くなくて、ちょっとモヤモヤしている部分がありました。スムーズに今日(4日)を迎えたかったので、昨日も投げました」と説明する。復活へ向け、手をこまねいてはいられない、居ても立っても居られない心境が伝わってくるようだ。
いずれにしても、肩や肘の状態が良くなければ、この時期に“連投”はできない。「それは間違いないです」とうなずく。第1クールを終え、「想像以上に体はすごく元気。何事にも前向き、意欲的に取り組めています」と自ら評した。
阿部監督が評価「一番でブルペンに入る姿勢はずっと見ています」
NPB現役5位の通算121勝を誇る菅野だが、昨年は右肘の張りで開幕2軍スタートとなり、シーズン終盤に調子を上げたものの、4勝8敗の不本意な成績に終わった。そして5年間にわたった原辰徳前監督の“第3次政権”が終了し、阿部慎之助監督が就任。そういう状況を踏まえて「アピールしなければならない立場」と言うのだろう。
その菅野がこのキャンプでテーマに掲げているのは、昨年状態が良くなかったスライダーの曲がり。「スライダーは何種類も持っていますが、いま最もテーマにしているのは、いかにベース板の近くで曲げるか。投げた瞬間から大きく曲がるスライダーより、打者の手元で小さく曲がるスライダーの方が強い(打ちにくい)ですから」と説明。「それに近いボールになっていると思います」と手応えありげだ。
キャンプ初日も、この日も、一番乗りでブルペンに入った。巨人投手陣最年長の34歳は「年齢順です」とおどけるが、阿部監督は「ブルペンの出来では投手を評価しない」と言いつつ、「ああいう、一番でブルペンに入る姿勢はずっと見ています」と称える。
菅野が過去8度務めている開幕投手は今季、11歳下の戸郷翔征投手が初めて担うことが決まっている。世代交代ムードも漂うが、菅野の意欲的な姿勢は周囲に伝わり、戸郷を始め他の投手にとって格好の刺激になるはずだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)