阪神左腕は「最初から違った」 育成時代から異彩…元コーチが驚いた“野球脳”
藪恵壹氏は2011年から阪神2軍投手コーチを務め、島本浩也らを指導
阪神やメジャーリーグなどで活躍した藪恵壹氏は、2010年限りで現役を引退し、2011年から2013年まで阪神2軍投手コーチを務めた。2010年育成ドラフト2位で入団してきたのが、貴重な中継ぎ左腕に成長を遂げた島本浩也投手だ。若き日からほかの選手との“違い”があったのだという。
「凄いなと思ったのは、ブルペンで待機しているときに準備し始めて10球くらいバババっと投げたらやめて試合の状況を見ている。そんな高卒ルーキーいませんから。島本は最初から違いましたよ。体はヒョロヒョロでしたけど、ベースボールIQはあるなと思いながら見ていました」
多くの若手選手は「やれと言われたらずっと投げているやつがほとんど」という。長いシーズンを過ごすプロの世界。当然勝負は、マウンドの上。長い準備を繰り返して、実際の試合で結果が出せなくては何の意味もない。
島本はそれを、福知山成美高から入団したばかりの育成新人のときから自然とやっていたのだから恐れ多い。「そういうコントロールができないと、試合数も多いですから。プロはちゃんとセーブするところはする、いくところはいく。そういう意味では島本は1年目、ルーキーのときからそんなのはできていましたね」と感心した。
藤浪晋太郎には温かなエール「ポテンシャルはそれは凄いですよ」
島本はプロ1年目はウエスタン・リーグで1試合に登板。しっかりと土台を築き、2014年に支配下を勝ち取ると、プロ5年目の2015年に1軍デビューした。2019年にはチーム最多の63試合登板で防御率1.67と飛躍。2020年に左肘のトミー・ジョン手術を受けた影響で2021年は登板がなかったが、2022年に復帰し、昨季は35試合の登板で防御率1.69の好成績を残して、日本一に貢献した。
また2012年ドラフト1位で大阪桐蔭高から入団した藤浪晋太郎投手へも温かい眼差しを向ける。「ポテンシャルはそれは凄いですよ。1イニングだったらどうにかなります。先発は無理だな(笑)」。
とはいえ米国に旅立ち、1年目からアスレチックス、オリオールズで計64試合に登板し7勝8敗、防御率7.18だった剛腕。2023年の平均球速は98.4マイル(約158.4キロ)とメジャーの舞台でも爪痕を残した。「表情が阪神にいるときより明るくなっている感じがするので、もっと向こうで頑張ってやってほしいし、十分できると思いますけどね」と温かいエールを送った。
(町田利衣 / Rie Machida)