「必要とされていない」予感した戦力外…育成30歳の覚悟「今年ダメだったら終わり」
オリックス・井口和朋「もうラストチャンス」
滲む汗に、魂が宿っている。日本ハムから戦力外通告を受け、オリックスと育成契約を結んだ井口和朋投手の眼差しが鋭い。宮崎春季キャンプでは黙々とブルペン投球を行うと、午後になってからは個別トレーニングで追い込む。
「もうラストチャンス。年齢も年齢で育成(契約)で獲ってもらって……。もちろん、今年ダメだったら終わりなので。結果も求めなきゃいけない」
額の汗を拭った紺色のアンダーシャツが、深く滲む。井口は2015年ドラフト3位で日本ハムに入団。入団1年目から37試合に登板するなど、救援投手として存在感を示した。2021年にはキャリアハイの43試合に登板し、防御率は1.86をマーク。プロ通算8年間で217試合登板を果たしている。
2023年は1軍登板5試合にとどまり、シーズンオフには戦力外通告を受けた。通達の瞬間は「やっぱりな……と。クビになった瞬間、トライアウトだなと思いました。シーズンの途中から、戦力として必要とされていないと感じてしまったので、今年だろうなと思っていました」と振り返る。
背番号は「129」も「楽しいなと感じています」
トライアウト受験後、オリックスから育成選手として、獲得のオファーがあった。背番号は「129」。新天地の雰囲気にも、少しずつ馴染み「新鮮ですね。同じチームで8年間過ごして、毎年同じ風景だったので。思っていた形とは違うんですけど、新しいチームに来て、新しい話を聞いて、勉強させてもらって、引き出しが増えて……。楽しいなと感じています」と深々と頭を下げる。
実績ある救援投手だが、3連覇を果たしたオリックスのリリーバーは盤石。目の前のチャンスを必死に掴む覚悟だ。「焦っても結果は変わらないので、1つずつ進んでいくしかない。ただ、出せるものを全部出すしかない。今年、1軍でしっかり成績を残して、来年も使いたいと思ってもらうしかないんです」。見据える未来は明るい。
30歳。2桁背番号の獲得だけでは、道は拓かない。「1軍でしっかりとシーズン中に戦える状態に。もっとスムーズに、何も考えずに8割くらいの気持ちで強いボールが投げられたら」。無心で、歓喜の輪に飛び込む。
(真柴健 / Ken Mashiba)