去った仲間から最上級の“褒め言葉” 「一番打たれたくない」福田周平が誓う「大活躍」
オリックス・福田周平、山崎から「1番打たれたくない打者」に指名された理由
ライバルになっても、同級生は温かい。オリックスの福田周平外野手は、明治大時代からのチームメートで、今オフに国内FA権を行使して日本ハムに移籍した山崎福也投手の言葉に感謝している。
「同級生だから(気を遣って)名前を出してくれたんじゃないですか?」。周囲から伝え聞いた山崎の発言に、はにかんだような表情を浮かべた。今オフにトークショーへ出演した山崎が、古巣と対戦した時に「一番打たれたくない打者」に指名したのが福田だった。
福田は、25年ぶりのリーグ優勝を果たした2021年にファンの間で「福宗正杉」と呼ばれた上位打線の切り込み隊長だ。クリーンヒットだけでなく、打球が詰まっても野手の間にポトリと落として出塁してみせる。さらに、打った瞬間に「ヨッシャー!」と声を挙げ、塁上では手を叩き自身とベンチを鼓舞する。味方としてはこんなに心強い1番打者はいないが、相手投手にとって心を乱されるこんな嫌な打者もいない。
しつこく、いやらしい打者だ。2021年6月6日の交流戦、中日戦(バンテリンドーム)では2回2死二、三塁での打席で、カウント1-2から7球連続してファウル。1ボール後の2-2からも3球連続してファウルで粘り、ボール後のフルカウントから16球目を中前適時打して追加点をたたき出した。
また、2022年4月24日のロッテ戦(京セラドーム)では、4月10日の対戦(ZOZOマリン)で完全試合を達成し、17日の日本ハム戦(同)でも8回まで1人の走者も出さずに降板した佐々木朗希投手に対し、先頭打者として初球を右前打して「完全投球」を17イニングでストップさせてみせた。
「サインを欲しいという人には、時間が許す限り書きます」
明大、オリックスとチームメートだった山崎だからこそ感じる、いやらしい打者の筆頭なのかもしれない。「『うるさいんです』と言っていたようですけど、うるさいって、どうなんでしょうね」と怒ったような表情を見せながらも、打者冥利に尽きる山崎の評価に福田の頬は自然と緩む。
今季のテーマは「怪我をしないこと。これが全てですね」。昨季は練習中の怪我などで、プロ入り6年目で1軍出場は自己ワーストの36試合にとどまり、打率も初めての1割台と低迷した。球団施設の舞洲に、ファームで調整中の福田の姿がトレーニング室にあった。コロナ前に米国のトレーニング施設に行くなど、元々、体作りやコンディション調整には造詣は深かったが、試合に出ることのできない期間にトレーニングに取り組む姿勢や考えが変わったという。
「鍛えようとして(器具や体などの)使い方が悪かったりしてはいけません。重い物を持てばいいという考えはさらさらありませんし、見た目がモリモリになったから良いというものではありません。怪我をしないためのトレーニングが勉強できたと思います」と〝怪我の功名〟で新しい体を作れたと語る。
広島から国内FA権を行使して移籍してきた西川龍馬外野手や、実績のある杉本裕太郎外野手、中川圭太外野手に茶野篤政外野手、外野も守れる野口智哉内野手ら若手も台頭し、厳しさを増す外野手争い。「数字は後からついてくるものなので考えたくはありません。試合出場も、僕が決められるものではありません。(自分が)操作できないところにエネルギーは使いたくないです」。
無駄をそぎ落とし、チームの戦力になることだけを考える一方で、力を注ぐのがファンサービスだ。舞洲でもサインをもらって感激するファンを何度も見たが、キャンプ地でも30分ごとに発車する選手送迎バスを見送ってサインを続ける。
「サインを欲しいという人には、時間が許す限り書きます。(自分が)もらった経験はありませんが、選手にサインを書いてもらえたらうれしいじゃないですか。せっかく来ていただいているのですから」。球団がキャンプイン前に参拝する宮崎市内の小戸(おど)神社に奉納した絵馬に記した福田の願意は「大活躍」。福田の執念に、注目が集まる。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)