大学3年まで登板ゼロも…“無名右腕”の評価が上昇中のワケ 首脳陣が驚く「120」の資質
広島の育成右腕・杉田が見せる堂々した投球「良い割り切りができている」
宮崎・日南で行われている広島2軍キャンプでは、将来を担う若手選手が必死に汗を流している。昨年のドラフトで6人の投手を指名。ドラ1の常廣羽也斗投手ら3投手が1軍キャンプで調整を重ねるなか、2軍で日に日に評価を高めている逸材がいる。育成ドラフト1位で入団し、背番号「120」を着ける杉田健投手だ。
杉田は日大国際関係学部出身。右肘を故障した影響で大学3年間は登板がなく、デビューは4年になってからのため、無名の存在に近かった。4年春のリーグ戦で初登板を果たすと、秋のリーグ戦では優勝に貢献し最優秀投手と最優秀防御率の2冠を獲得。188センチの長身から力強い球を投げる姿が広島スカウトの目に留まり指名に至った。
マウンドでは、育成とは思えない存在感を発揮する。18日に行われた巨人2軍との練習試合では1回無失点。広島投手陣の失点が続くなか、140キロ後半の速球を連発し巨人打線を僅か9球で三者凡退に抑えた。「1軍のシート打撃に登板した時は少し緊張しましたが、2軍戦での緊張はありませんでした。初めての対外試合にしては良かったと思います」と振り返る。
プロの舞台でも緊張しないという“強心臓”の持ち主、マウンドでは「大丈夫っしょと思っています。周りからメンタルが強いと言われますが意識したことはありません」と持ち味を発揮することに注力する。「負けたら終わりの大学の試合は緊張していました。ただプロは全て自分の責任。打たれたらまた練習すればいいと、良い割り切りができています」と話す右腕は、プロ独特の空気感に左右されないよう、マウンドで意識していることがある。
格上の打者が相手でも「上から目線で投げる」
「名前を知っている選手が打席に入っても“上から目線”で投げる。誰が相手でもそこは強く意識しています」。言葉で言うのは容易いが、なかなか実践できるものではない。ただ、相手が格上の打者だろうが、マウンドで堂々と胸を張り、躍動感溢れるフォームから力強い球を投げ込み続ける。
この“強心臓”右腕に、首脳陣の評価も高まっている。練習試合での登板を見守った横山竜士2軍投手コーチは「腕の振りもいいし、真っ直ぐも力強い。何より打者と勝負できているのが1番の魅力でしょうね」と話すと「今後はイニングを増やしていけたら」と杉田が次のステージに進んだことも示唆した。
ただ杉田本人は「(練習試合は)ゼロで抑えられましたが、150キロを出す気でいったので球速には満足していません」と、この日チーム最速の148キロを計測しても納得はしていない。「力まず球速を出して、簡単にストライクを取ることを意識して練習しています」と、視線はずっと先を見据えている。
ハッキリとした受け答えにも強気な印象を受ける杉田だが、推しメンの話になると自然と表情が緩む。「乃木坂46の岩本蓮加さんの大ファンです。大学の頃は、大会が終わるとダッシュで駅まで行き、新幹線に飛び乗ってコンサートに行っていました」と笑顔を見せる。試合で使うグラブには「トキトキメキメキ」の刺繍。これは岩本さんが初めてセンターを務めた曲だ。「自分が活躍して、“推し”もアピールできれば最高ですね」。22歳右腕は愛用のグラブと共に支配下登録への道を切り開いていく。