岡田監督に「泣く泣く渡した」 妻と溶け込む日本…阪神ノイジーが取りに行く“忘れ物”
来日2年目を迎えたノイジー、昨季は日本シリーズで価値ある2本塁打を放つ
ここぞの一打でチームを救った助っ人が、今シーズンは“忘れ物”を取りに行く。今回、Full-Countでは来日2年目を迎えた猛虎の助っ人に注目し、シェルドン・ノイジー外野手にインタビューを行った。家族への感謝、岡田彰布監督との絆、今季にかける意気込みなどを語った。
来日1年目の昨季は日本人投手の対応に苦労した。133試合に出場し打率.240、9本塁打、56打点。それでもオリックスとの日本シリーズでは第6戦でエース・山本由伸から1号ソロ、第7戦では宮城大弥から決勝の2号3ランを放つなど勝負強さを発揮して優秀選手賞を獲得し、今季の残留を勝ち取った。
守備でも左翼のポジションでは安定したスローイングでリーグトップの12補殺を記録。伸び盛りの若手たちがレギュラーを手にする中、定着しなかった左翼の位置を守り抜いた。それでも「去年は個人的には良くないシーズン。チームが勝てたことが全てだったね」と振り返る。
今キャンプでは右肘痛で別メニュー調整だったが、終盤には全体練習に復帰し開幕に向け調整を続けている。昨年、1年を通しNPBでプレーできたことは自身にとって大きな経験になったという。
「やはりメジャーと日本の野球は違うなという印象。プレースタイルだったり、中継ぎ陣の使い方、スコアの取り方など。良い時も悪い時もありながら、1日1日を対応していく。今年は継続した成績を残していかないといけない。去年はそれができなかった。その中でボールを捉える確率をしっかり上げていく準備をしていきたい」
日本Sで手にしたウイニングボールは岡田監督へ「泣く泣く手渡したよ(笑)」
日本で在籍した初めてのチームが伝統ある阪神タイガース。強烈なファンの声援に感謝し、ベンチで采配を振るう岡田監督にもシンパシーを感じている。
「僕は1年間しかプレーしていないが、タイガースは素晴らしい組織。歴史、伝統を重んじる。岡田監督は頭が切れて采配も素晴らしい。選手をうまくリードして、適材適所でプレーヤーを選択する。ただ、ウイニングボールは持って帰りたかったよ(笑)」
日本シリーズ第7戦で掴んだウイニングボール。優勝会見で岡田監督は「どこ行ったか知りません」と語り、ボールの行方を探していた。ノイジーが持っていることを知ると「多分持ってくると思います」と、周囲を笑わせる一幕があった。
「あの時はバックの中にボールを忍び込ませたんだよ。ボスに『どこ行った?』と言われたので、会見が終わった時に泣く泣く渡したよ(笑)。本当は持って帰りたかった? もちろんイエス! だよ。それは、次の機会にするしかないね」
日本の文化、生活には「エレベーター、電車など人口密度が高いことに驚いたけど、そこまで苦労したことはない」と、戸惑うことはなかった。生活面ではケイデンス夫人が、率先して日本の環境に溶け込む姿勢を見せた。これまでの助っ人は通訳が身の回りの世話を行うことが多い中、通訳なしで電車に乗り、買い物を行うなど、誰に頼ることもなかったという。
「プレーに集中できる環境を作ってくれる家族には本当に感謝している。今では何も困ることなく街中を歩いているよ。普通に電車にも乗るし、家族だけでショッピングもする。異国の地でプレーすることは不安もあったが、家族が支えてくれ、チームメートがしっかり受け入れてくれた。僕は自分のためにプレーするわけじゃない。家族、チームのためにやるだけさ」
リーグ連覇、連続日本一を狙うチームは現状、左翼のポジションを若手たちが激しい争いを繰り広げている。ノイジーが本来の力を発揮することができれば、セ・リーグ屈指の布陣が完成する。指揮官に譲ったウイニングボールを今年こそは手にするつもりだ。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)