親密ゆえの“ビックリ発言” 宮城大弥「頭を下げさせたい」…恩人の能見篤史氏に挑戦状
オリックス・宮城「能見さんの成績を超えて頭を下げさせたい」
よほどの信頼関係で結ばれているのだろう。オリックス・宮城大弥投手が、2022年まで投手兼任コーチを務めた能見篤史氏に「能見さんの成績を超えて頭を下げさせたい」と挑戦状をたたきつけた。
衝撃の“ビックリ発言”が飛び出したのは、能見氏が宮崎春季キャンプに「臨時コーチ」で訪れた2月下旬だった。宮城は「僕はもう大丈夫です。全部が全部、能見さんの枠にはまりたくないので。自分の考えもありますし、1つの引き出しとして取っておきたいと思います」と、2021年から2年間、先輩投手かつコーチとして支えてくれた能見さんからの“卒業”を宣言した。
さらに「(能見さんとの)絡みは2、3年ですが、もう15年くらいの絡みはしたので、30年くらいは僕が頭を下げさせたいですね。良い成績を残すと、あっちは頭を下げるしかないんで(笑)」と続けた。2人の関係性を深く知らない人には、22歳の宮城が発した言葉には、22歳も歳の離れた能見氏に対して敬意を払っていないと受け取られるかもしれない。ただ、それほど濃密な2年間を過ごしたのだった。
13勝4敗の成績を残して新人王に輝いた2021年。勝てない時期が続いた夏場に、当時の能見兼任コーチは「このままじゃ勝てないよ」とだけアドバイスを送った。「誰も(高卒)2年目の選手に大きな期待はしていません。自分で責任を背負い込むことはないよ」という意味が込められた助言。一皮むけるためにも「答えは自分で見つけなさい」という厳しくも温かい言葉で宮城はまた成長し、山本由伸投手、山崎福也投手がチームを去った今、開幕投手の最有力候補に挙げられるまでに成長した。
さらなる高みを目指す「原動力」として目標にしたのが、“能見さん超え”だった。「能見さんの勝ち数やイニング数、防御率などの通算成績を全部超えたいですね。投手のタイトルでも上回ったら、野球人生では僕の勝ちなので(笑)」と、投手部門の全成績で能見さんを超えることを宣言した。
能見氏は2011年に200回1/3を投じ…「彼のイニング数は僕からしたら少なすぎます」
能見氏は「防御率などは(すでに)超えてますし、僕なんかは長年かけてそこまでたどり着いただけですので(宮城が)普通にやれば超えていきます」と早くも“敗北”を認めた。ただ、一方で「彼のイニング数は僕からしたら少なすぎますね。基本的にいつも規定投球回数ギリギリでやっていますので、まだまだかな」と注文を付けることも忘れなかった。
近年は投手の分業制が確立。能見氏が2011年に200回1/3を投げた当時とは状況が違うことは承知で、山本、山崎の抜けた穴を埋めるためにも宮城に自覚を促した。同じ左腕として最多奪三振のタイトルを獲得し、18年間で104勝を挙げたレジェンドの数字に近付くことは、リーグ4連覇、日本一奪還につながる。「好不調の波を少なくして、シーズンを通してチームの勝利に貢献したいと思います」。宮城には、エースの自覚がある。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)