胃袋に詰めたおにぎり10個…1年で15キロ増が「しんどすぎ」 10年後に気づいた理想の未来
オリックスに5年在籍した左澤優氏、東京・原宿でプロテイン専門店の店長へ
おにぎりを胃袋に詰め込んだ思い出が、自身を突き動かす。昨季までオリックスで打撃投手を務めた左澤優氏が、新しい道を歩んでいる。昨年11月末で選手2年、裏方3年の5年間お世話になったオリックスを退団。今月28日から、東京・原宿にてプロテイン専門店「EZOBOLIC(エゾボリック)」の店長として奮闘している。
オリックスでの5年間で「裏方として縁の下の力持ちになる楽しさも覚えました。そのなかで、トッププレーヤーの厳しい日々を目の当たりにしていると『自分も勝負してみたい』と感じるようになりました。現役時代の本気での熱量というか……。『自分の人生、もう1回勝負してみたいな』と思うようになりましたね」と、ともに過ごしたギラついた目たちを思い出した。
プロテイン業界への挑戦は「新しい自分を見つけたい。インパクトがあると思いました」と飛び込んだ。現役時代は「プロテインをガチガチに摂ったことはありませんでした」と深くうなずく。公称172センチ、75キロの左澤氏は「食べるのがしんどすぎました。(高校時代が)おにぎり10個、作ってもらってました。今、プロテインを勉強していれば、母親を楽にできていたのかなと思います」と微笑む。
横浜隼人高に入学した頃は「痩せてしまうので、たくさんご飯を食べていました。そういう体質だったので。高校1年生で57キロしかなくて、1年間で72キロまで持っていきました。だけど、『食べるしんどさ』はありましたね。一気に15キロも増やしたので……。野球リュックの2/3はお弁当でした」と頭をかく。
シェイカーを振る度に“発見”する、幸せな笑顔
自身の苦しんだ“増量”。野球少年少女の手助けに少しでもなりたい――。その一心で新しいステージに歩を進めた。店内に並ぶほとんどの商品は試飲可能で「1人1人に合ったものを一緒に選んでいきたいです」と目線を合わせる。
「プロテインは筋トレをしている人だけの飲み物というイメージを変えてみたいと思ったんですよね。もう少しフランクに。スタバの抹茶ラテを頼むのとプロテイン抹茶味を同じくらいの感じで……。それくらい、街に溶け込んでほしいなと思っています」
仲間にも恵まれた。社会人JX-ENEOS時代の1学年先輩である内田聖人氏から、「EZOBOLIC」の代表を務める菅野圭吾氏を紹介してもらった。内田氏は「(左澤は)野球の時は強気の投球ですけど、昔からプライベートではゆったりしている感じでした。社会人時代も『投手会』を盛り上げてくれていましたね。飾らない性格なので、先輩にも後輩にも好かれています」と人柄に惚れている。
菅野氏とは進む目標が同じ方向にあり、すぐに意気投合。旭川実業(北海道)で甲子園経験のある菅野氏は「自分もそうだったんですけど、体が小さくても諦めることなく(選手としての)可能性を伸ばしてほしい。そういう思いですね」と力を込める。
おにぎりを頬張って白球を握った現役時代。今はシェイカーを振る度、幸せな笑顔がある。
(真柴健 / Ken Mashiba)