「少ないね」短い言葉に感じたプライド 心動いた中日移籍で涌井が目指す“金字塔”
中日・涌井は6日の広島戦で新人から20年連続勝利、通算400先発で160勝に到達した
中日・涌井秀章投手が6日の広島戦(マツダスタジアム)に先発し、6回1/3を8安打ながらも無失点の粘りの投球で今季初勝利。新人から20年連続白星に加え、通算400度目の先発マウンドで160勝目を飾った。多くの節目となった2024年の1勝目に、37歳のベテランがプライドをのぞかせた。
現役最多は516先発のヤクルト・石川雅規投手に譲るが、涌井の400先発は20年で積み重ねてきた金字塔に変わりはない。通算勝利160勝も現役では石川の185に次ぐ数字だ。節目を節目で飾るあたり、やはり何かを持っていると感じさせる。
「少ないね」
届いた短い言葉の返信は、記者から今季初勝利と節目到達への尊敬の念を込めた言葉に対するものだった。西武時代の2012、2013年は登板機会のほとんどが救援。勝ちパターンの一角として2012年は30セーブ、翌年は7セーブ15ホールドポイントを記録している。
過去19年のプロ生活で大きな離脱はない。楽天時代、右手に打球を受けて骨折した2022年の10試合がキャリアでのシーズン最少登板だ。横浜高の先輩で、高卒1年目から大車輪の活躍を果たしてきた松坂大輔の背中を見てきた涌井にとっては、まだまだ満足できる数字ではない。到達した“偉業”はただの通過点に過ぎない。
通算200勝は「どこかで2桁勝利しないと難しい数字かな」
同年のオフ、楽天の石井一久監督から中日とのトレード話があることを相談された。家族と相談するために1度持ち帰ったという。
「その場で『残ります』と答えなかった時点で心が動いているんだと考えた。他の球団が必要としてくれている。そう考えたら楽しくなった」
中日では投手、野手関係なく、良い“兄貴分”としてチームをまとめている。「何かのきっかけでチームが上昇する流れはくるんです。そんなに深刻に捉えなくていいんじゃないかな」。1月の自主トレの際には、球団初の2年連続最下位に沈んだ中日を鼓舞するかのように語っていた。
「1年間ローテを守って、規定投球回いって2桁勝利。それしかないでしょ」。3球団で4度の最多勝を誇る右腕は、中日のために全力を尽くすことを誓った。通算200勝へは年齢的なことを考えると“足踏み”はできない。
「どこかで2桁勝利しないと難しい数字かな。現実的には」
開幕から2試合に投げ1勝、防御率0.00。7日に出場選手登録から外れたが、1度体を休めてすぐにローテに戻ってくるはずだ。2桁勝利のシーズンが今年になるのではないかと、期待させる2024年のスタートとなった。
(湯浅大 / Dai Yuasa)