野茂氏から教わったフォークに仰天 横山楓「実力不足」から目指す夢舞台

オリックス・横山楓【写真:北野正樹】
オリックス・横山楓【写真:北野正樹】

オリックス・横山楓「そんな投げ方もあるのか…と驚きました」

 目からうろこが落ちるとはこのことだった。オリックスの横山楓投手は今春の宮崎キャンプで野茂英雄氏から「フォーク」のアドバイスを受けた時、衝撃を受けた。「フォークは苦手な球種だったのですが、そんな投げ方もあるのか……と驚きました」。柔和な表情を一変させ、野茂さんとの出会いを振り返った。

 球速やボールのキレはあるが、決め球を欠く傾向のある横山に、投球の幅を広げてもらう狙いが首脳陣にはあった。横山は、球団OBとして訪れた野茂さんから春季キャンプ中のブルペンでフォークの握り方の指導を受けた。

「親指の位置をずらすことを教わりました。『手首が負けたらフォークが落ちないから、ボールに親指を添えるんだよ』と。これまでも、どうやったら手首が負けないように投げられるのだろうかと考えていましたけど、投げるのは人差し指と中指の2本なので。この2本でどうにかしようと思っていました。親指を添えると言われた時、ビックリしました」と、目を見開いて説明した。

 グローブに振られてボールがばらける癖を直そうと、左腕の動きを小さくすると、右腕の動きも小さくなって自然な形で「ショートアーム」のフォーム改造に“成功”した。「(投球フォームは)上からたたくという感じではないのでフォークは難しかったのですが、ワンポイントアドバイスでイメージしやすくなりました。真っすぐより前でボールを離せるようになって、データ的にも効果は上がってきています」。レジェンドからの助言は生きた。

 指導を受ける前から野茂氏との縁はあった。自分に合った腰の回転をYouTubeなどで検索して参考にしたのがトルネード投法だった。「野茂さんのクイック投法などを動画で見て取り込んだりしていました。お手本にしていた方から教えてもらったので、うれしかったですね」。オフに派遣された豪州ウインターリーグで「高めのボール」の使い方を教わったことに加え、野茂さん直伝のフォークで投球の幅は広がった。

 今季開幕までの4試合は、4イニングで打者13人を無安打に抑え、8奪三振と抜群の安定感を示したが、開幕1軍入りは逃した。「(開幕1軍に)入れなかったのは僕の実力不足だとわかっています。打たれる時はカウントを悪くしたり四球で塁を埋めてしまったりしていて、そこを抑えても首脳陣の信頼度は低くなります。早いカウントでしっかりと追い込んで、安心して見ていられるようにするのが課題です。こうやったら打ち取れるという形はできつつあります。チャンスは回ってくると思うので、そこで“モノ”にできるかが勝負だと思います」。勝負の時を待つ。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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