12年前に父が母を殺害 メジャーデビューのエ軍26歳右腕が同僚に語った“壮絶な過去”
エンゼルスのクリストファクが28日のツインズ戦に登板した
■ツインズ 11ー5 エンゼルス(日本時間29日・アナハイム)
身内による壮絶な体験を乗り越え、エンゼルスのザック・クリストファク投手が28日(日本時間29日)、本拠地・ツインズ戦でメジャーデビューを果たし、2回3安打、2奪三振を奪い、2失点ながらも自責点ゼロの投球内容だった。
5-9の8回から登板した26歳右腕は味方のエラーも絡んで2点を失った。9回は先頭打者に二塁打を浴びるなど、1死満塁のピンチを招いたが、最後はダブルプレーでしのぎ0点に抑えた。
クリストファクには、母が父に殺害されるという辛い“過去”があった。米メディア「ジ・アスレチック」のエンゼルス番サム・ブラム記者が昨年9月に「彼の父親は母親を殺害した。エンゼルスのプロスペクトは、今、光を見つけている」のタイトルで報じ、同年の優秀記事の1つに選出された。
2012年12月22日(同23日)の午後、アトランタの郊外での出来事だった。当時15歳だったクリストファクは野球の練習を終え、帰宅すると大勢の警官が家を取り囲んでいた。最初は火事だと思ったが、消防車が来ていないことにすぐ気が付いた。急いで警官の元へ駆け寄った。その警官に両親について尋ねられた。
数時間前にクリストファクの母ドナさんは、彼を野球の練習に送ったばかりだった。彼が戻ると、母親の黒いホンダ・オデッセイはガレージの近くに駐車してあり、地面には血があった。EMT(救急医療士)が心肺蘇生を試みた場所だ。時すでに遅し。後に、母親が父親のジョン被告に殺害されたと知った。
状況を聞いた同僚は「全員がショックを受けた表情をしていた」
両親は19年間、夫婦関係にいたが、経済的な問題が結婚生活に大きな影響を与え、2011年8月に離婚した。直後に、ジョンさんは急変。逆上し、冷酷になり、最終的には暴力をふるうようになった。ザックは母について口汚く書かれたメールを父から受け取るようになった。
ジョン被告は離婚後も元妻を追い回し、接近禁止令が出ていたが関係なし。ドナさんを脅迫する手紙を送った数日後、ナイフを車に携帯しながらスーパーの駐車場で元妻を追い回し、2012年3月に逮捕されていた。
ドナさんは殺害される2か月ほど前に郡判事にジョン被告の釈放延期を求めた。しかし、2012年10月29日に釈放され、それから2か月もしないうちに、ジョン被告は車の中で座っていたドナさんに(外から)2発の銃弾を浴びせた。
エンゼルス入団後、クリストファクは凄惨な事件の状況をチームメートの前に立ち語ったという。同僚だったジャック・ダッシュウッドは「全員がショックを受けた表情をしていた。誰に聞いても、今まで球界で会ったなかでザック・クリストファクは一番タフな男だと言うだろう」と、コメントした。「これが自分。自分であることに怖さはない」クリストファクは後に話した。
辛い経験を乗り越えた右腕は、メジャーの大舞台で、新たな1歩を踏み出した。
(Full-Count編集部)