「きっかけで勝てるほど甘くない」 栗山巧が語った“今”の西武、借金24のチームの転機
40歳、西武・栗山巧が語った“今”の西武
西武は15日、ベルーナドームで行われたDeNA戦に0-5で敗れて3連敗。チームは19勝43敗で借金は24まで膨らんだ。春先は2軍調整もチームの苦境を救うべく、今月4日に1軍再昇格となった40歳のベテラン、栗山巧外野手は「僕の口から今のチーム状況は語れない。ただ、見ての通り苦しい状況というのは同じ気持ちです」と胸中を語った。
試合前の打撃練習を終えると三塁側ベンチの左端、“定位置”に腰を下ろした。栗山は静かに、言葉を選ぶかのように語り始めた。プロ23年目の今季も開幕1軍入りを果たしながらも、調子が上がらずに4月21日に出場選手登録から抹消。6月4日に再昇格を果たすと同世代の中村剛也内野手とともに打線の中軸を任されている。
ただ、40歳コンビが3、4番に座るラインアップに「10年前と変わらない」「この2人に今でも頼っているようではだめ」などと、若手が台頭していない現状を憂う声もあった。
「変な言い方になるかもしれないですけど、見ている人がどうとでも思ってくれたらいいです。僕らは自分の出番に備えるだけですし、出番があるように頑張るし、課題があればそれをクリアするようにするだけ。それは……お好きなように」
周囲の声は関係ない。ベテランは自分のやるべきことを貫くだけだ。1軍から再び声がかかった時点でやってやろう、という思いは「そりゃ、ありますよ。そりゃそうです。もちろんです」と言葉に力を込めた。
「きっかけだけを研究してデータにとる部署があったっていいわけですよ」
長いキャリアでチームが勝っているときも、負けているときも知っている。だからこそ、チームが苦しいときに好転するようなきっかけがあってほしい。しかし、栗山は「きっかけがあるから勝てる、というほどの甘い世界じゃない」という。「他の選手がどういう気持ちでプレーしているか分からないですけど、結果的に終わったときにきっかけがあるんだと思います。『あれがきっかけだったね』と」。
例えば6月11日の広島戦。最後の打者となった源田壮亮内野手が執念のヘッドスライディングを見せたがアウトとなり、しばらく立ち上がれなかった。今は必死に戦う日々だが、主将が見せた気迫のプレーが、シーズン終了後に振り返ったときに流れが変わるきっかけになっていた、と感じるのかもしれない。
「きっかけなんて、そんなんがわかるんだったら、みんなで作りますよ。それこそ、きっかけだけを研究してデータにとる部署があったっていいわけですよ。プロ野球の90年の歴史があるわけですから(笑)。終わったときに、アソコが分岐点だったよね、となるんです。みんなそれを探してというか、今日がきっかけになるように、何かがきっかけになるように、みんな頑張っているはずなんです」
明確な“答え”はない。しかし、自分のプレーがきっかけになるかもしれない。
「勝負事だし、プロだから。そこはめげずにトライしていくだけです。選手は毎日、勝つために一生懸命やっている。まだ3位のチャンスだってありますよ。そこに向けて全力をだしてやっていますよ」。通算2131安打、孤高のバットマンは瞳をギラつかせていた。
湯浅大
○著者プロフィール
湯浅大(ゆあさ・だい)
東京都生まれ。成城高、法大を経て1997年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでサッカー、野球などを担当。主にMLB、DeNA、西武などを取材した。2023年11月からFull-Count編集部に所属。
(湯浅大 / Dai Yuasa)