小田裕也が「必死に」抱きしめた三塁ベース 仕事人の“流儀”…34歳が生きる格別な場所
オリックス・小田裕也、本拠地の大歓声は「格別なものがある」
プロ入り10年目、渋みを増した男が輝き続ける。オリックスの小田裕也外野手が、本拠地・京セラドームで躍動した。15日のヤクルト戦に「8番・中堅」でスタメン出場すると、6回の第3打席で左中間三塁打、第4打席でも左中間二塁打を放ち、ダイヤモンドを全速力で駆けた。
「京セラドームの打席でね。オリックスファンの前で一生懸命に。満員のファンの前でグラウンドを守らせてもらえるのは格別なものがあるなと感じています」
翌16日の同戦も「8番・中堅」でスタメン起用。週末の本拠地を沸かせた。小田は2014年ドラフト8位でオリックスに入団。俊足巧打の外野手として自身のポジションを“確立”してきた。25年ぶりのリーグ優勝を果たした2021年は主に代走や守備固めで101試合に出場。2022年は72試合、昨季は77試合に出場して、3連覇に大きく貢献。3連覇中、ほとんどの期間を1軍で過ごしてきた。
「ずっと(1軍に)居させてもらったから。そこに“変に”慣れていた部分もあったかもしれないですね。今年はファームで1、2か月を過ごして、1軍に上がれた時に新鮮さもあった。『あ、忘れていたな』という感覚もありました。良い意味で捉えれば、初心に戻った感じです」
プロ10年目の今季は開幕1軍入りを逃した。4月11日に今季初昇格したが、19日に出場選手登録を抹消された。その後も2軍で調整を続け、5月31日に今季2度目の1軍昇格。“定位置”に戻った。
試合終盤で存在感を発揮する、勝利に必要不可欠なプレーヤー。2戦連続でのスタメン起用にも「(気持ちは)変わらないですよ。スタメンでもベンチでも、レフトでもライトでも、センターでも。試合に出させてもらえるんだから、ベストの準備をして臨んでいます」と爽やかに言葉を紡ぐ。
抱きしめた三塁ベースに34歳「必死ですからね」
高いプロ意識がある。先発出場と途中出場では「動く時間が違うので(出番への)持って行き方は少し違います」と、時計の針を確認する。「9イニングで考えると、どうしても力をセーブしてしまう可能性もある。だから、僕は1イニングを積み重ねていく感覚です。(体力温存に)それは全く考えていません。もちろん(スタメン起用で)9イニング出るつもりではいますけど、1試合、1球の大切さは変わらないので」。全ては、勝つために動く。
「レギュラーとして出ている選手の考え方はわかりませんけど……。今の自分は、そういう役割ではないと思う。だから9回までを考える必要はないんです。1イニングの連続なので。だから(代走や守備固めで)1イニングの時と何も変わりません」
滴る汗が、背番号50に滲む。15日に三塁打を放った際、ヘッドスライディングで三塁ベースを抱きしめた。「必死ですからね。振り返る時間はありません。毎日、新しい試合が待っていますから」。歳を重ねても、颯爽と駆け抜ける姿はいつまでも変わらない。
○真柴健(ましば・けん)1994年8月、大阪府生まれ。京都産業大学卒業後の2017年に日刊スポーツ新聞社へ入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間に「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者を卒業。2023年からFull-Count編集部へ。
(真柴健 / Ken Mashiba)